リオ・グランデの砦

 

政治ドラマや戦闘ものみたいなストーリーに家庭や異性を絡ませてあるとなんかごまかされたようなつまらない気分になりがちの自分だが、これは家庭の絡ませ方が秀逸で何よりそこを味わう作品だった。

個人的には納得のいかないミッションにも耐え、くたびれながらも任務を遂行し続けるジョン・ウェイン陸軍士官学校を数学の点数でドロップアウト、エリートコースからの挫折を体験した息子は兵士を志願し、望んだわけではないが彼の駐留地への配属となる。なんと双方にとってやりにくいこと!

まずは部下たちの特別扱いが息子を居づらくする。わだかまりの解決はよくある雨降って地固まる方式だけどその“雨”の後始末をすることになる現場の朴訥で旧式の曹長がいい。演じるはヴィクター・マクラグレン。新兵たちにも古臭いやり方でイニシエーションを授けるはずが逆に侮られたり。かっこ悪い事態の受け止めに愛嬌があり、人情味も。立派過ぎるジョン・ウェインよりまず注目した。

モーリン・オハラ演じるジョン・ウェインの別居中の妻は豊かな家の出身で世間知に長けた人物なんだが、息子のヤケともいえる選択を裏から手を回し阻止しに来る。なんとも嫌な感じと自分は受け取ったが、私自身も現実生活でこの人がと思うような人が子どものためなら平気であらゆる手を使うという場面に遭遇したりもしていて、ここもリアル。

厭な妻だなあなんて思いながらみていたらそれにはそれなりの理由があり(彼女は南部の大農園出身、ヤンキーのやり方の犠牲者)、なんかこの辺も現代日本でも通じるところを感じた。そしてわざとらしくない帰着点を迎える。

モーリン・オハラの気品、迫力は凄かった。調べると「ノートルダムの傴僂男*1で魅力的な牽引役エスメラルダを演じた人なんだ。

終盤はインディアンによる襲撃シーン*2だが、そこには納得のいかない規範への心憎い挑戦が描かれていてこのスタイルが心地よい。私はジョン・フォードの映画を観ていてそういう跳躍をたびたび感じそこが気持ち良いなと思っている。

この作品もふや町映画タウンのおすすめ。(☆☆ けっこうおすすめ!!)

*1:ノートル=ダム・ド・パリ - 日常整理日誌

*2:その描写も厳かでいやなものではなかった。