ふや町映画タウンおすすめのジョン・フォード監督作品を二作鑑賞。
一作目「怒りの葡萄」
有名なタイトルだけど、筋はわかっておらず、陰惨な話だったらどうしようと思いながらの鑑賞。
しょっぱな仮出所してきたヘンリー・フォンダを迎える家族の「脱獄してきたのか!さすが!」みたいなやりとりにたくましさ、おかしさを感じ、引き込まれるままに終盤まで持っていかれる。
土地を失った一家が望みをつないだカリフォルニアでの暮らしは働きたい人間の数の過剰により最低の条件を飲むしかない状態。低い賃金の暮らしでもとりあえず仕事にありつきたい人とストライキ派の葛藤。現代に通じるものをとても感じたし、仕事を求めて車でキャンプ場からキャンプ場へ移動する姿は「ノマドランド」*1的生活のマイナス面を抽出したような感じ。
「ノマドランド」との大きな違いは家族で移動しているところ。家族の母親役がどっしりしていてヘンリー・フォンダ演じる息子が熱い激情ゆえに暴走することをいつも心配していたり、生活の基本の考え方が地に足をついていて、そのおかげでこの映画全体も基盤がしっかりして信頼できるストーリーという印象になっている。
ラスト近く母親がまとめみたいなセリフをいうのは20世紀フォックス社長の指示でジョン・フォード監督の意向は無視されたとwikipediaで読み納得した。あのセリフはないほうがナチュラルだ。
ジョン・キャラダインが演じた元説教師がとても気になる。原作者スタインベックと交流のあったエド・リケッツ(Ed Ricketts)ことエドワード・フランダース・ロブ・リケッツという海洋生物学者、エコロジスト、哲学者がモデルということだ。
二作目「長い灰色の線」
陸軍士官学校に長年奉職したアイルランド移民の男の物語。遠い世界の物語と思いきやしょっぱなの一本気でおっちょこちょいな姿でぐんと観客をひきつけ、彼の大河物語がテンポよく展開していく。仕事を本当に誇りを持ってするとはどういうことか、甘やかしと愛情の違い、家庭とは子どもとはなど主人公とは生活の地平のかけ離れた観客にも普遍的な事柄として頷かせる力。
アイリッシュのおとっつぁんの味がとても良い。アイルランドの結婚の風習など丁寧に描かれアイルランド移民としてのジョン・フォード監督を強く意識する。
姿勢が良いのだけど堅苦しくない。アメリカ映画の良さを味わう。