時代劇は死なず!京都太秦の職人たち

 

春日太一さんの時代劇研究本、テレビ時代劇のウェイトが高いので映画時代劇のことを主に知りたい自分は躊躇もしたのだけど、手にとってみたら東映の明朗時代劇→集団時代劇→テレビ時代劇への流れ(子ども時代に好きだった「花山大吉」の項など楽しい)、大映時代劇→勝プロ(最終的に自分の美学を追及しすぎて一般人の理解不能の境地に達してしまう勝さんの話は先日読んだ小説「国宝」*1の主人公を彷彿とさせる。)、大映倒産後、京都撮影所のクオリティに着眼した市川崑によって「映像京都」の設立(「紋次郎」系列)、松竹下賀茂撮影所をルーツとする「京都映画」(「必殺」系列)など、一口に時代劇といっても撮る考え方がまるで違うことなどを知った。

予算、時間度外視の勝新のやり方に周りがついていけなくなる話が続く中、先日亡くなられた井上昭監督が肩を持っておられたのも印象的。

「必殺」シリーズも、80年代上京して周りが三田村邦彦などに夢中になっているのを、家族が朝日放送に勤めていた自分は、「『必殺』ってこんなに人気があるんだ・・」と思ってみたりしていたが、それはメジャー化したあとの姿であってそもそもの始まりは大阪からの反抗の気持ちで作られた前衛的なドラマ「お荷物小荷物」のプロデューサー山内久司氏が生み出した、アンチモラルへの挑戦、現代劇のつもりでの作劇など挑戦的な作品であったことを知る。

東映太秦映画村のくだりは、東映の大変な労働条件に改めて驚いたが、ちょうど今年の前半に放映していた朝ドラ「カムカムエヴリバディ」に映画村ができるあたりの描写があったな、主人公の彼氏だった殺陣のプロを目指していた男がお化け屋敷の出演にくさっていたなあと膨らませながら読むことができた。