ミシマ社の本 

前から ミシマ社という会社のことを仄聞し

mishimasha.com

魂のこもったおもしろそうな出版社だなと好感を持っていた。

今年はミシマ社の本を二冊読む機会があった。

最近読んだのがいとうせいこう氏の「ど忘れ書道」 

私と2歳違い、1961年生まれのいとうさん、近年固有名詞などをど忘れすることが頻発、頭に叩き込むためにスケッチブックにそれを書にしたため、それを題材に言い訳や慨嘆やらを綴った本。最初は正しい言葉が書かれていたのだが、だんだん間違った方や思い出そうとした時の言葉などが書かれたりしている。ど忘れという起きている事象は自分と同じなんだが、それを語る芸!うまい!こういう風に描写すれば面白い読み物になるんだなあとそれを大いに愉しむ。

もともと連載で、その月にいとうさんがど忘れされた言葉の書道を紹介した後、それにまつわる文章が書かれている体裁だが、書かれた文字を読むだけで笑いがこみあげてしまうような力を持った言葉についてはトップの書道のみで、文章としてはとりあげられなかったりするところも芸だなあと感じる。

ど忘れという一見ネガティブをエンジンに変換するところ、赤瀬川原平さんの「老人力」にも通じる流れも感じる。

みうらじゅん氏が街で撮りためた写真をスライドに映しながらいとうさんがツッコミをいれる「スライドショー」というイベントをとても楽しんでいるのだけど、この本はいとうさんがど忘れした過去の自分にツッコんでいる風情。

ミシマ社のサイトには本書刊行後の「鬼気迫るど忘れ書道」の連載も掲載されている。なかなか楽しい。

www.mishimaga.com

 

ミシマ社のサイトをみていたら、「100分de名著」の「平家物語」の回でとても話が面白かった能楽師の安田登さんといとうさんの対談も載っていた。

www.mishimaga.com

ここから辿ってバックナンバーをつらつら眺めていたら好きな作家の名前がちらほら。またゆっくり拝見しよう。

もう一冊読んだミシマ社の本は春日太一氏の「時代劇聖地巡礼

著者の春日太一氏、wowowで映画塾とか開催されているのを時々きいてわかりやすい話し方だなと思っていたので舞台裏ツアーも視聴。

舞台裏ツアーでは、本の中ではモノクロでしか紹介されていない写真のカラー版が出てきて、場所についてよりわかりやすくなっていた。

直後に観た「ひばり十八番弁天小僧」でも、紹介されていたロケ地が出てきて喜ぶ。

画像こちら長岡京のたけのこ料理で有名な錦水亭のよう。以前観た伊藤大輔監督の「弁天小僧」がアウトローとしてのスタートなのに比してこの映画では、アウトローになる経緯がまず同情的に描かれ、娯楽色がより強いものだった。 

本全体では主に映画よりテレビの必殺シリーズ鬼平のロケ地の言及が多かった。紀行文的に話が進み、とても読みやすいし、京都を中心とする関西圏の話なので、ちょっと行って、また映像作品を観て対比してみたいなという気持ちになる。大好きな「十兵衛暗殺剣」*1の湖での死闘シーンの検証(琵琶湖の西の湖の中で唯一足がつくところ)など面白かった。