悲愁物語

 

あの頃映画 「悲愁物語」 [DVD]

あの頃映画 「悲愁物語」 [DVD]

  • 発売日: 2012/04/25
  • メディア: DVD
 

 鈴木清順監督の70年代後半の怪作。日活を解雇され10年ぶりの作品だったらしい。後半江波杏子の暴走、スコセッシ監督の「キング・オブ・コメディ」を思い出したが、あちらの方が後だった。(1982年)

女子ゴルファーをタレントとして活躍させようとして・・という欲まみれの題材だけど、仕掛け人チームの岡田真澄氏とかもう笑ってしまうほどキザったらしいし(ゴルフ姿はなかなか決まっている。おしゃれな人ではあったなあ。)、ゴルフ雑誌の編集でゴルファーの男を演じている原田芳雄氏も、蛮勇という感じでビジネスの世界でもいつものペースだ・・とおかしくなってしまう。

江波杏子氏のファンの方が、「映画としてはどうなのかと思うけれど江波さんの演技は良い」とtwitterで書かれていて、確かに、皆さん清順監督の描く狂った世界の中で与えられた仕事をちゃんとこなしておられる。江波さんのこの女ならやりかねないという迫力。江波さんが輝きすぎていて、なんでこんな美しい人が・・っていう部分もあるのだが、そこが面白いともいえるし見続けられる魅力になっているとも考えられる。

江波氏が主人公とからむ現場は、まだまだ造成中のベッドタウン的な色彩のあるところだったり(なぜこんな場所だという疑問・・だけどここゆえ成立するストーリーとも)、なんだか対策も緩くエスカレートしていったり、どうしてこうなるんだというところも大いにあるが、70年代後半日活解雇され久々の仕事だった鈴木清順監督が好きなようにやったという空気も漂っている。(少年と桜、ピストル、ラスト近くの猟奇的だけど画になっている場面など)

ビデオパッケージには松竹・三協映画提携作品とあるが、松竹系列の映画だからか、佐野周二氏が、主人公のゴルフコーチとして出演。

主人公を売り出すための訓練の場面の穏やかなチャームスクール講師、お顔になじみがあるなあと調べたら葦原邦子氏だった。テレビで馴染んでいたのかな。宝塚スターで中原淳一氏の奥様だったか・・中原淳一展で奥様の苦労を読んだりしていたのだけどこの方だったか・・

宍戸錠氏が刑事として登場。場面は少ないがコミカルなキメポーズあり。特別出演のよう。

主人公のゴルファーを演じた女優さんはオーディションで選ばれた白木葉子という女優さんだが、白木葉子といえば「あしたのジョー」に出てくる迫力のある美貌のお嬢様の名前・・この映画の原案も梶原一騎氏だし。最初華々しく登場するあたりは、少し「あしたのジョー」の白木さん的空気があった。

ふや町映画タウンでレンタルした時、「清順ファンの若い人たちに凄く評判の映画」というような言い方をされていた。確かにカルトっぽい魅力。「松竹映画100年の100選」にも選ばれているが、ほめ方にそういう空気。

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