あふれる熱い涙

 

あふれる熱い涙 [VHS]

あふれる熱い涙 [VHS]

  • 発売日: 1993/05/20
  • メディア: VHS
 

 「月はどっちに出ている」で大好きになったルビー・モレノが岩手に嫁いできた女性フェイ役。無口な夫が理解できなくなり、友人を頼って東京・新大久保に。そこで、戸川純佐野史郎扮する麻美と国分のカップルに出会う・・・だんだんとわかってくる犯罪被害者である国分と、そのことに特別の事情のある麻美。戸川純の痛々しいまでの真摯さ。彼女の住む部屋は無国籍でアジアのどこかのよう。映画全体もそういう空気が流れる。フェイが逃げ出した岩手の無口な夫だって美しい水を使った杜氏で、こんなところ逃げ出すの当然などという気持ちにはならない。嫁の来手のない農村で皆が必死だという感じはあるし、共同社会のつながりがタイトであることは表現され、ぎちぎちではないフィリピン社会で育ったフェィにはキツいのかなということだけ伝わる。いかにもフィリピン社会で悪いことをする日本人の象徴みたいな男、フェイの父吉田を演じているのは若松監督の映画や、「牝猫たちの夜」*1及び、それのリブート「牝猫たち」*2で印象的だった吉澤健。罪と贖罪というテーマはよいのだけど、素朴なケーナのような音楽などが、吉田のような加害者とフェイの母のような被害者みたいな感じに物語を集約させてしまうようなおそれもあり、そんな物語ではない部分もこそを描いている作品でもあるのにもったいない気も。