新旧邦画雑感

あれやこれやと観た記録。

1.おらおらでひとりいぐも(2020)

原作*1が好きだったし、田中裕子主演で沖田修一監督ということで大いに期待して鑑賞。若い時に東北を飛び出してきたのに、70歳を過ぎて東北弁でブツブツ頭の中で考えている主人公桃子さん。そのブツブツや毎朝「どうせ今日も同じだし・・何にもないし・・」と起きることに対してネガティブ思考になる状況を映画では擬人化して「淋しさ」及び「どうせ」という役名がつけられている。「淋しさ」の方は宮藤官九郎濱田岳青木崇高。好きな人たちが語るポップな東北弁の淋しさは面白いし、三人の導き手というのが神話ぽく、最初、老いた主人公田中裕子が老いた姿で考えていることは若い時の主人公を演じた蒼井優の声というところも実年齢の実感のない自分にはなるほどと思ったのだが、全体を通すとすべてがわかりやすく映像として表現されすぎていて見せられることによって世界が限定されてしまうという気持ちになる。原作で表現されている年を取って一人でいる時の気持ちは体験したものにはすっくりわかるのだけど、わからない年代の人に向けたものだろうか・・。湿布薬を貼る時の不穏などは面白かったけれど、主人公が興味を持っている古代生物などの話の活かし方も自分にはとってつけたようであまり気に入らなかった。自分にはここがクライマックスと思えるようなシーンからの蛇足的な長さ、ちょっと勝手にいい話というかわかりやすい話にしているような部分などもう一つ。

音楽の使い方はいいし、田中裕子氏の演技は良い。田畑智子演じる娘に痛いところを突かれた時の表情など。田中さんの繊細な表現、本当にいつもみていてつくづく良いなあと思う。

そうそう主人公桃子さんというのは親の決めた結婚がイヤで東北から逃げ出してくる設定なのだが、田中さんが若い頃に出演されていた山田太一のドラマ「想い出づくり」の登場人物たちの姿とも重なる。

 

 

 

2.千姫御殿(1960)

豊臣秀頼と政略結婚したあと、関ヶ原の戦いになり、徳川側に引き取られた千姫が夜な夜な男を求め・・とかいう、どえらい通俗的な伝承をベースにした物語。(映画の中では陰謀説がとられていている。)wikipediaでみると、史実ではないが、錦絵や浪曲になっていたらしい。ストーリーも真実の愛を求め・・みたいなかなり甘っちょろいもの。千姫山本富士子が演じているのでそうはいっても気品はある。

二代目鴈治郎さんが家康。鴈治郎さんの時代劇姿私には珍しい。中村玉緒さんもとても可憐な町娘役で登場。山田五十鈴氏が腹黒いいやな奴として登場。成敗されるだけみたいな存在として描かれそれまでの年代での山田さんの姿を思い出すとこういうポジションかとちょっと残念な気持ちになる。