「木更津キャッツアイワールドシリーズ」はこの映画からの引用をメインに据えてある作品で、そちらでなじんでいたもので、この映画の最中も「木更津~」のテーマが何回も耳の奥で鳴っていた。
野球だけの話ではなく、PTAでの焚書事件などもからませてあり、文系クラブ人間にもついていける構成。
野球というのは、古き良きアメリカの家族愛みたいなものとイメージが重なるところがあると思う。そういうものから逃げ出してきたけれど、父親再発見というような心境はこどもが年齢を経て、ある程度親の支配からは独立できたと感じるようになってからこそたどり着ける境地だと思う。ティム・バートンの「ビッグ・フィッシュ」*1みたいに。やっとその心境になったのに、伝えることができない寂しさを持つ人は多いだろうし、そんな気持ちがこの映画の原動力になっている気がする。実家の人が大切にしていた当時はうっとうしかったもの、そのありがたみがじんわりわかるっていうような経験している人は多いのではないだろうか。最後にFor Our Parentsという言葉が出てきたが、まさにそういう映画だ。
そして、野球バカ(失礼!)ばかりの話ではなく、大リーグで活躍したかったけれど自分は自分の人生を歩んだよという人にも光をあてるあの加減。実はこのエピソードが特に好きだった。演じた老優のたたずまいも含めて。
また主人公の夢を支える家族、これが一番偉い。妻は自分の実家の兄をも敵に回して。上に書いた焚書のところでも、保護者相手に堂々と反論。なかなかできるものじゃない。頼もしい女性像だった。
淀川さんとおすぎさんの「おしゃべりな映画館」2巻で紹介されている。