危いことなら銭になる

 

危いことなら銭になる

危いことなら銭になる

  • メディア: Prime Video
 

 宍戸錠さんが愛称エースのジョーとして活躍しておられる映画をはじめて観た。ガラスを引っ掻く音が嫌いでライバルにしてやられたり、ちょっと抜けたところのあるコミカル路線。(なので、この映画では「ガラスのジョー」と呼ばれている。)明るいクライム活劇。「ルパン三世」みたいな空気。敵役の”計算尺長門裕之氏もクールで良い。「おんなの細道 濡れた海峡」*1で気になった草薙幸二郎さん、あの時とはまた違う60年代モダンな姿で登場。

一緒に活躍する女子大生役が浅丘ルリ子さんということに配役表を見るまで気が付かなかった。今の神秘性も漂わしておられる雰囲気とは違って元気な女の子という感じ。

f:id:ponyman:20210227064217j:plainジョーとルリ子さんの乗っている赤い車も気になる。こちらのブログによると「メッサーシュミットKR200」と書かれている。

2月20日の左卜全さんのお誕生日にこの映画の贋金つくり師を演じる卜全さんがサイコーとtweetされている方がいらっしゃってこの映画をみたのだが、卜全さん大活躍でうれしい。そして卜全さんの妻を演じているのが武智豊子さんでさらに嬉しい。映画の中で飴玉をねぶったような喋り方なんて紹介されていた。

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二人の住まいのあたりの風景がまたいい。

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先述のブログには、浅丘ルリ子さんのこと、武智豊子さんのことなど詳しく書いておられ、この方は「ルパン三世」の先駆けと考察しておられた。読んでいてとても参考になった。

2021年2月に読んだコミック

きのう何食べた? 17

 

 

テレビドラマになったとき、内野聖陽氏が弁護士でなく美容師のほう?と驚いたのだけど、内野氏のコミカル&繊細という引き出しをちゃんと見極めての配役だったんだなあ。今ではその配役しか考えられない。

レタスしゃぶしゃぶやってみようかな。旬の野菜がくるおまかせ宅配で毎週レタスばかりが来て生で食べようと思うと大変なことになっている。。

 

俺、つしま 3

 

俺、つしま 3

俺、つしま 3

 

 

昨年の秋発行 コロナで飼い主おじいちゃん(女性なのに、主人公のネコつしまがそう思い込んでいる。思えばその色気のなさも魅力。)が屈しているのも描かれていて、この落ち着いたおじいちゃんでもか!との親近感。最近自分だけ鬱屈してるのかという錯覚に陥ることがあるので。やはり猫は自分のペースでいいな。落ち着く。

 

ちはやふる 45

 

ちはやふる(45) (BE・LOVEコミックス)

ちはやふる(45) (BE・LOVEコミックス)

 

 

追うものと追われるもの。うまい具合に配置してあり両方の立場に入り込めるような構成。

名人の目の障害を相手の癖、特徴として処理できるか、そこをひるまず狙うことができるのかという問題。このことは物語の最初のこどもの時の優等生真島の自分が許せなくなるような心の傷とつながり、主体を代えて奏でられているんだと気がつく。

緊迫の試合の中、周りの人からのメールやメッセージにそっとしといてやれとかき乱されそうになる。親目線?

 

信長協奏曲 20

 

 

このコミックでもともと病弱だった信長がタイムワープしてきた高校生と入れ替わり自身は明智光秀として生きている話。この巻ではもう武田氏は滅びたらしい。映画「影武者」の頃だなあどう決着がつくのか見当もつかない。いまのところ関係は良好でよくみかける信長の凶暴な感じとかはない。大河ドラマ麒麟が来る」は、ほんとにチラチラっとしか見てなかったのだけど、最後の方で出てきた家康の饗応みたいな話がこの巻には出てくる。家康は鯛の天ぷらが好みというエピソードが出てくるが、こどものとき読んだ伝記で家康の死と天ぷらが関わっていると読んだ記憶があるので天ぷらが出てくることがなんとも意味深に感じられた。すべてがひっくり返る予兆か?

この巻ではもう武田氏は滅びたらしい。映画「影武者」の頃だなあ。

 

あさドラ 4

 

あさドラ! (4) (ビッグコミックススペシャル)

あさドラ! (4) (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者:浦沢 直樹
  • 発売日: 2020/08/28
  • メディア: コミック
 

 

東京オリンピック前日。この日、えらく天気が悪かったのは大河ドラマ「いだてん」で覚えた。

目前に迫っている東京五輪には終始あまり関心を持てないのだけど、この中に出てくるような、感情を超えて職務として必死で遂行しようとしている人々も今回もいらっしゃるだろうな。

前のほうの巻に出てきた走りの早い子も「いだてん」の世界とどこかつながりそうと待っているのだけど、目下この巻は伊勢湾台風のときに主人公がみた怪物と格闘中。

わが街

 

わが街 [DVD]

わが街 [DVD]

  • 発売日: 2003/04/11
  • メディア: DVD
 

「殺したいほどアイ・ラブ・ユー」*1がとても良くて同じくローレンス・カスダン監督でふや町映画タウンおすすめのこの作品を観てみた。主役はまた同じくケヴィン・クライン。両作品であまりに違う雰囲気で巧みな演じ分けに驚く。

主人公は、ロサンゼルスに住む弁護士。波風たたないことを至上にしているようなごく平均的な感覚の持ち主が見て見ぬ振りでやってきた自分の社会の問題に改めて気が付き自分でやれることをやってみようと思ってみるが自分の尺度の判断は底が浅かったり。。と、とてもバランスのとれた描き方。

一人息子の親離れの時期の母親の心持ちもとてもナチュラルに丁寧に共感を覚えるタッチで描かれ、終始自分の物語として入り込んでみた。

スティーブ・マーティンが夫婦と家族ぐるみの付き合いをしている映画プロデューサーとして登場。抑えた演技で良かったし、この人物のアクセントがスパイスとなって効いている。

問題は問題としてきちんと描き、簡単な正解にはたどり着けなくても試行錯誤でやって行こうという気持ちになれるとても良き作品だった。

いいかげん、馬鹿  あのころ、早稲田で

 

いいかげん、馬鹿

いいかげん、馬鹿

  • 作者:中野 翠
  • 発売日: 2020/12/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

あのころ、早稲田で (文春文庫)

あのころ、早稲田で (文春文庫)

  • 作者:翠, 中野
  • 発売日: 2020/03/10
  • メディア: 文庫
 

 中野翠さんの本を二冊。「いい加減、馬鹿」は、毎年年末に出るサンデー毎日のコラムをまとめたもの。これは2020年末に出たもの。いつも楽しみにしているし、文化面は今回も良かったし、このコロナ禍を中野さんはどう過ごされたのかは同時代的な共感も覚えたけれど、中野さんの持ち味はいい子ちゃんぶらないところとは思うのだが、ちょっとコロナに関して中国と結び付けた発言は、優等生タイプの自分には抵抗のある部分もあった。このままだんだん本音みたいな感じでけろりんと、まるでS野綾子さんみたいに発言を暴走させていかれたらつらいな・・と。ちょうどみた「殺したいほどアイ・ラブ・ユー」*1のトレイシー・ウルマンの母親役の人みたいに外国のおばあちゃんが無責任に毒吐きしていてもそう気にならないのに、国内で文章を仕事にされている方がちょっと自分からみると偏ったり誰かが尻馬に乗りそうな発言をされるのは気になるな。これは、リリー・フランキーが邦画コラム「日本のみなさんさようなら」で書いていた、洋画は正味粗がわからないこともあるけれど、邦画はつい身近な世界なので粗が目立つ、みたいな話だろうか?

 

「あのころ、早稲田で」は私の好きな60年代の話。63年生まれの自分には60年代、70年代のはなしをみると、自分は参加できてないけれどその空気だけは知っていた世界という感じで心拍数があがるし、あの頃の時代のものを好んで鑑賞したりしがち。自分は80年代の大学生なので社会情勢、流行っているもののノリなどは大いに違うけれど、19歳から22歳くらいまでの感情というのは共通するものがあり胸がざわざわしたり懐かしい気分になったりもした。学生運動の派閥の話はいつもこんがらがるのだけど、中野さんの読みやすい文章、運動家の姿に注目した中野さんらしい着眼点にさすがとなった。佐々木マキさんの表紙も良い。

<メモ>

映画「泪橋*2で描かれていた羽田闘争、あそこで描かれていたことは誇張でもなんでもなかったんだということや事の経緯も知ることができた。

 

新宿の「小茶」というお店の話。

「小茶のおばちゃん」と呼ばれる中年の女の人が仕切っていて、田中小実昌さんとか年長の有名文化人が来ると、若い者は席をゆずって、店の前で立ち飲み。鈴木いづみ氏が酔っぱらって店に入ってくると、おばちゃんはなぜか露骨にイヤな顔をした、と書かれている。(p90)鈴木いづみさん、若松監督の「エンドレス・ワルツ」で描かれていた方だな・・お名前はきいているけれど・・というレベルの方なのでその周辺もっと掘り下げたくなっている。

殺したいほどアイ・ラブ・ユー

 

殺したいほどアイ・ラブ・ユー (字幕版)

殺したいほどアイ・ラブ・ユー (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

すごい拾い物。ビデオパッケージはもっと趣味が悪くなんとも底の浅そうな雰囲気が漂っていて観るのが後回しになったけれど、ふや町映画タウンのおすすめに挙がっていて観てみたら、もう傑作。実在の事件をベースにした復讐家庭コメディだけど、こういう風に仕立て笑わせてくれる凄腕。トレイシー・ウルマンの一途でピュアな感じ、そこからのおかしさがとても利いている。彼女の母が東欧からの移民という設定も岩のような重厚な面白さがあるし、美しいリヴァー・フェニックスの繊細でそれゆえ焦っている姿、そこからのコミカル演技なども最高。ウィリアム・ハートキアヌ・リーヴスがどうしようもないが、人は悪くないジャンキー・・なんとも皆の芸達者ぶりを堪能した。

イタリア系の家庭でという熱さや混沌も本当に楽しい。「イタリア式離婚狂想曲」*1の変奏みたいに感じるところもあった。

コルドリエ博士の遺言

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先日ルノワール版の「どん底」の、原作ではそこまで表現されていない、「持ってけドロボー」的な生き方の男爵*1いいですね、とふや町映画タウンで話をしていたら、清水宏の「小原庄助さん」*2に影響を与えているでしょうねといわれ、大好きで追っかけている清水宏監督の世界とジャン・ルノワールの世界のつながりを初めて意識。確かに柔らかくてほのかなユーモアの漂う世界は相通じるものがあるなあ、もっとルノワール監督の作品みなきゃなという気持ちに。

それで観たのがこのルノワール版「ジギルとハイド」である「コルドリエ博士の遺言」。テレビ局の監督の様子からスタートする新しさカジュアルさ。出てくるのは凶悪事件なんだけどさらさらさらっと描いてみせる腕。ハイド的なものに変身するコルドリエのぶれない友人が話を引っ張っていて観やすい。

精神分析的な思想も底に流れているが、コルドリエのライバルの精神分析医には冷たくあしらわれる皮肉。分析医のオフィスがとてもそれっぽく面白い。

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ハイドになった時のジャン=ルイ・バローの様子の変わり方は凄い。和田誠さんとの対談集「たかが映画じゃないか」の中で山田宏一さんが「やたら凶暴で狂った映画」なんておっしゃってる。私には墨でさらさらっと描いた大人の漫画のような風合いにも感じられた作品。

*1:演じていたのはルイ・ジューベ。 中野翠さんも著書「コラムニストになりたかった」の中で1970年代フィルムセンターであった1930年代のヨーロッパ映画の回顧上映で彼に出会い、シビれたと書いておられたし、「剣戟王 嵐寛壽郎」の中で丸根賛太郎監督の来栖重兵衛というペンネームは彼の名前からとあった。

*2:小原庄助さん - 日常整理日誌

復讐浄瑠璃坂

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直木賞の名前の由来、直木三十五の原作。

二川文太郎と並木鏡太郎の共同監督作品。二川文太郎、映画「カツベン」*1にも出て来た無声映画「雄呂血」*2の監督で、クラシック監督のイメージなので昭和30年のこの作品も監督されてたんだ・・と息の長さを感じたが、渡辺才二氏と嵐寛寿郎研究会による「剣戟王 嵐寛壽郎」に載っていた並木監督へのインタビューに裏話が載っていた。

 

剣戟王 嵐寛寿郎
 

 

二川監督はマキノ倒産以降松竹に移ったが、会社の閥に阻まれ、数作で監督ができなくなり、その後、昔監督に世話になったプロデューサーが宝塚映画でこの作品を撮る段取りをつけようとしたところ、親会社の東宝が二川監督一人ではダメで、アラカンさんとたくさん映画を撮っている並木監督と共同監督で撮るよう要望があったとのこと。「二川」「ろっぺい」コンビとして「雄呂血」他大ヒットを飛ばした寿々喜多呂九平氏の脚本が用意されていたのだが、並木監督はトーキーの脚本ではないと判断、本人の了解をえて全面的に手直しし、(時代の流れを感じ)複雑な感慨にとらわれたとのこと。

観た「日本映画傑作全集」のビデオに同梱されている資料には、脚色竹井諒、加味鯨児と記されている。

 筋は宇都宮の旧家同士の確執からの仇討ドラマであるが、武を重んじる家が、能などのソフトな嗜みももつ家を愚弄というところから始まっている。軽んじられる側の跡取り息子が先日亡くなった四代目坂田藤十郎。彼の舞う能が冒頭割合時間をとって出てくる。争う両家の犠牲となるのが、彼の許嫁で対立した家の娘(扇千景)。議員姿でない扇さん、自分には大変珍しい。↓

 

画像

 

ちょうどこの映画を観た日に「徹子の部屋」に扇さんが出ておられたが、映画女優としての時間は短かったようだ。(2/18までTverで配信。)

この映画の見どころは、それぞれの家の軍師となったアラカンさんと大河内傅次郎氏の対峙。アラカンさんは爽やかに、大河内氏は人を食ったような大きさで活躍。大河内氏側は江戸の大久保家に匿われたりしていた。

仇討と恋愛だとか、筋の流れは少し忠臣蔵に似ているが、作っている方もそれを意識しているのか、冒頭にこの事件が忠臣蔵より前に起きたことが語られる。(1672年に起きた事件で、忠臣蔵の事件より30年くらい前の話ということだ。)

ja.wikipedia.org