80年代、村松友視が世に出た頃、「時代屋の女房」と一緒に読んだと思うのだけど、原作はもう少しさらっとしたものだったような・・映画は脚本が唐十郎と村松友視ということで、とても唐十郎風味。養鶏場で、鳥の羽根が画面一杯に舞い散るところや、隠微で耽美な屋根裏部屋、廃墟のような場所など、80年代に観た唐十郎の舞台を思い出した。
殿山泰司と、瀬川新蔵という役者さんが芝居狂の老人で、鈴ヶ森刑場の近くの泪橋という場所にちなんで、白井権八の出てくる「鈴ヶ森」を演じたりするのだが、白井権八*1、少し前、幡随院長兵衛ものの映画「大江戸五人男」*2でみていて、イメージがすぐ湧くのが嬉しかった。
(瀬川氏が特に芝居っぽい演技をたびたびされるが、前進座の人で時代劇によく出ておられたよう)
幡随院長兵衛と白井権八はお話の世界では*3一緒に権力に立ち向かう人間で、それと、過激派として追われていた渡瀬恒彦(苗字は白井)をかばう老人たちというのがきっちりリンク。
もう一度しっかり「大江戸五人男」のあらすじを読んでいたら、この映画で老人たちが匿う女性(佳村萌)のことを呼んでいる小紫の名前も出てきており、もう一度「大江戸~」や幡随院ものを観るとさらにイメージが増幅しそうだと思った。
匿っている女性の部屋でのシーンにはお人形さんも。
またこの女性に「イエスの方舟」や近親相姦的な要素もからませてあるのがとても唐十郎的と感じた。女性が指人形がうまく、病気の子の慰問に行っていたという話の中で、ちらっと披露する洋風パペットも気になった。
原田芳雄が、佳村萌の兄として、濃い存在感で出てくるが、その妻を演じた宮下順子の自然なたたずまいが良い。気が付かなかったが、どぶさらい(この言葉も唐風)として石橋蓮司がキャスティングされているが、原田さんと石橋さんはほんと良く一緒に仕事されているんだなあ。「竜馬暗殺」*4もだったし、黒木組によく参加されているのかな。
丘の上の老人というのを演じられた藤田進さん 風格を感じたが、黒澤明監督の「姿三四郎」の主演とか?
鈴ヶ森刑場跡にお参りに行くシーンがあるが、八百屋お七や天一坊もここで処刑されたらしい。83年の映画だが、泪橋付近の住まいの風情がとても良い。今あの景色は残っているのだろうか・・
※追記:2021年1月に原作を読んでみたら「イエスの方舟」は話題として話の中に出て来た。原田芳雄氏が演じていた役は出てこなく、映画よりずっとさらっとした印象だった。