かくも長き不在

 

かくも長き不在 (字幕版)

かくも長き不在 (字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

 少し前、wowowで放映しているのを途中から見て、その時、途中なのに画面にひきつけられるものがとてもあったので、今回ちゃんと最初から観てみた。

説明的でないのにヒロインのカフェの女店主の置かれていること、気持ちがすごくわかり、ぐんぐんひっぱられる。

カフェの前を歩く記憶喪失の浮浪者は、収容所に連れていかれ、死んだ知らせだけ来てる行方不明の夫なのか?夫の叔母が出てきて検分したりするけれど、彼女にとってはもう10何年もの前のこと、行方不明の甥っ子の名前を息子につけたけれど、その息子も立派に大きくなり。。今さらややこしいな、という思いもある感じ。

ちょうどNHKの「ねほりんぱほりん」という番組で、震災で家族が行方不明の人を呼んで話をきくという回があったが、割合早くお葬式などをして、心の決着をつけたい夫の母と、つけられない本人というようなシチュエーションが紹介され、まさにこの映画のようだなと。

調子のよい終わり方をするわけではないけれど、カフェの女主人の一生懸命が胸をうつし、挿入曲をきくだけでも胸が詰まるが、いやな気分の詰まり方ではない。自分にいいきかせるように語るラストのヒロインのつぶやきをきいていると、すぱっとあきらめたりせず強い思いを支えに暮らしを続けていってほしいと願ってしまう。

もしかして、カウリスマキの「過去のない男」はこの映画への返歌?過去を思い出すことがなくても新しくやっていくこともできるというような・・

くず拾いをしている浮浪者の男が熱心に作る切り紙細工、口ずさむオペラ、それらが簡単に過去への手掛かりに結び付くわけではないけれど、今の男の心根をあらわすようで心憎い設定。