いいかげん、馬鹿  あのころ、早稲田で

 

いいかげん、馬鹿

いいかげん、馬鹿

  • 作者:中野 翠
  • 発売日: 2020/12/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

あのころ、早稲田で (文春文庫)

あのころ、早稲田で (文春文庫)

  • 作者:翠, 中野
  • 発売日: 2020/03/10
  • メディア: 文庫
 

 中野翠さんの本を二冊。「いい加減、馬鹿」は、毎年年末に出るサンデー毎日のコラムをまとめたもの。これは2020年末に出たもの。いつも楽しみにしているし、文化面は今回も良かったし、このコロナ禍を中野さんはどう過ごされたのかは同時代的な共感も覚えたけれど、中野さんの持ち味はいい子ちゃんぶらないところとは思うのだが、ちょっとコロナに関して中国と結び付けた発言は、優等生タイプの自分には抵抗のある部分もあった。このままだんだん本音みたいな感じでけろりんと、まるでS野綾子さんみたいに発言を暴走させていかれたらつらいな・・と。ちょうどみた「殺したいほどアイ・ラブ・ユー」*1のトレイシー・ウルマンの母親役の人みたいに外国のおばあちゃんが無責任に毒吐きしていてもそう気にならないのに、国内で文章を仕事にされている方がちょっと自分からみると偏ったり誰かが尻馬に乗りそうな発言をされるのは気になるな。これは、リリー・フランキーが邦画コラム「日本のみなさんさようなら」で書いていた、洋画は正味粗がわからないこともあるけれど、邦画はつい身近な世界なので粗が目立つ、みたいな話だろうか?

 

「あのころ、早稲田で」は私の好きな60年代の話。63年生まれの自分には60年代、70年代のはなしをみると、自分は参加できてないけれどその空気だけは知っていた世界という感じで心拍数があがるし、あの頃の時代のものを好んで鑑賞したりしがち。自分は80年代の大学生なので社会情勢、流行っているもののノリなどは大いに違うけれど、19歳から22歳くらいまでの感情というのは共通するものがあり胸がざわざわしたり懐かしい気分になったりもした。学生運動の派閥の話はいつもこんがらがるのだけど、中野さんの読みやすい文章、運動家の姿に注目した中野さんらしい着眼点にさすがとなった。佐々木マキさんの表紙も良い。

<メモ>

映画「泪橋*2で描かれていた羽田闘争、あそこで描かれていたことは誇張でもなんでもなかったんだということや事の経緯も知ることができた。

 

新宿の「小茶」というお店の話。

「小茶のおばちゃん」と呼ばれる中年の女の人が仕切っていて、田中小実昌さんとか年長の有名文化人が来ると、若い者は席をゆずって、店の前で立ち飲み。鈴木いづみ氏が酔っぱらって店に入ってくると、おばちゃんはなぜか露骨にイヤな顔をした、と書かれている。(p90)鈴木いづみさん、若松監督の「エンドレス・ワルツ」で描かれていた方だな・・お名前はきいているけれど・・というレベルの方なのでその周辺もっと掘り下げたくなっている。