恋はデジャ・ブ

 

恋はデジャ・ブ (字幕版)

恋はデジャ・ブ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

グラウンドホッグデーの映画ということで、2/2にtweetされている方がいらっしゃり、以前からグラウンドホッグの行事ってかわいらしいなと興味があったもので観てみた。

グラウンドホッグデーのwikipedeia

ja.wikipedia.org

 

軽い気持ちで観始めたのだけど、良くできたアメリカ映画って本当に楽しい。人を楽しませることにとても長けている。安直な邦題、この方が来る人が多いのかもしれないが、もう一つだな・・原題の「Groundhog Day」の方がずっと良い。日本じゃなんのことかわからないという危惧からの改題かもだけど・・

ビル・マーレイ扮する野心家で高慢ちきな天気予報官が同じ日をループする物語。

私も同じ夢を繰り返し見ることがあり、何度目かにはどうせ夢の中だから何をしても同じと普段ならしない行動をしたりして、たいそう後味が悪かったことなど思い出した。(全部自分の頭の中の話だけど)人間が気持ちよく生きていくための基本みたいなのを改めて感じさせてくれる。堅苦しくなく愉快な調子で。

この映画のwikipedeiaをみていたら、ロケ地が写真入りで紹介されていて入魂の記事。なかなか楽しい。(NHKの番組ねほりんぱほりんwikipedeiaを支える人々の話を見て以来書いている人に思いを馳せるようになった。)

ja.wikipedia.org

上の記事によるとこの作品はアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されているとのこと。twitterをみても、この映画を評価する方が多い。そして、この登録簿の映画抑えておきたいなと思った。

ja.wikipedia.org

 

次世代に向けて

「七人の侍」のコメント欄でご参考までに、と内田樹さんの「『七人の侍』の組織論」という文章を教えていただいた。

 

blog.tatsuru.com

 

分析興味深く拝見し、なるほどと思った。社会がピンチの時、平気で弱い方の切り捨てが起きたりするのを、高みから人道的にどうというより、自分に迫っている危機としてどうしていったらいいか、それには

七人の侍のうち、もっとも重要な、そして、現代においてもっとも理解されていないのが、林田平八(千秋実)と岡本勝四郎(木村功)の役割である。

 というところ、自分に迫るものがあった。平八的なるものを不要不急として切り捨てていく合理主義ばかりでは体は生きながらえても精神がもたない。コロナ禍の社会だけでなく、これからもただ生きながらえたいらよいのか、どう生きたいのかというのはいつも考える問題である。

そして、次世代を育てるということ、自分とは身近な映画の話でもあてはまる。

購読させていただいているブログ、「2ペンスの希望」で神戸山さんが渋谷の名画座シネマ・ヴェーラの館主さんの著書について書かれている記事があるのだが、

 

kobe-yama.hatenablog.com

 

ここで

「典型的な名画座のお客さん」だけを相手に映画館をやっていきたくないのだ。それでは袋小路だと思うから。未来がないと思うから。青臭いかもしれないが、少しずつでも、「典型的な名画座のお客さん」の外にいるお客さんを名画座に取り込まなければ、名画座に未来はないし、それは長い目で見れば映画館に未来がないのではないのか、と思っているわけだ。

 と引用されている考え方、私が利用している京都のVHS専門店ふや町映画タウンでも、今年どうされているのか確認していないが、学生フリーレンタル*1というのを苦しい経営の中で実行されていて、近視眼的にみると、お金に困っているのにそれは一体?となるのだけど、なるほどそういうことか・・と。

また、中学の倫理の授業できいたことだが、宝石店でまずほんものにたくさん触れることで目が肥え、偽物を見破れると。

映画の世界にいらっしゃる神戸山さんもお正月に、映画の世界に進む人へこのようなメッセージを書いておられる。*2

 

「古典・原点に戻れ」(先輩風を吹かす業界内の先達は遠ざけ、映画の初発・最盛期の熱量を知れ)

「遠くの隣りに学べ」(今元気の良い業界、切磋琢磨・淘汰選別が最も激しい業界の最前線、そのエキスを吸収せよ。すぐ傍にいる信頼できる他業界の友人・先達を注視せよ。間違っても映画業界のすさんだ空気を吸い込まないようご用心)

「無数の映画を浴びるように見ろ」(手当たり次第に先行する映画を見て見て見尽くせ。十代二十代前半までは作るな。わき目も振らずにひたすらに過去の映画資産の吸収消化に専念せよ。←京都ふや町映画タウンの大森店主のおススメ!)

 名作の面白さに若い人が近づくための努力、難しいのを痛感しているけれど、せめてレンタルして良かった作品はどんどん広報するくらいのことはしていきたいなと思っている。

*1:全くのフリーではなく登録料だとか多少はお金を出してもらうシステムのよう

*2:才能はお金のある世界に - 2ペンスの希望

ある殺し屋の鍵

 

ある殺し屋の鍵

ある殺し屋の鍵

  • メディア: Prime Video
 

 「ある殺し屋」*1シリーズの第二弾だけど、わたしはこちらの方がより好きかも。とても簡潔にまとまっていてニヤっとさせられる。雷蔵さんの物静かでストイックな仕事人という風情に惹きつけられるし応援したくなる。普段は舞のお師匠さんという設定もいい。

政治とカネのごたごたに雷蔵さん扮する殺し屋が使われ・・という話だが、ヒエラルキー構造の見せ方もテンポが良くうまいし、そこに介在する女、佐藤友美さんの60年代美人な雰囲気も楽しめる。

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「殿さま弥次喜多捕物道中」*2などの東映時代劇でかわいらしい姿を拝見してから大好きになった山形勲氏はひげで重々しく・・

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岡本喜八監督の「大菩薩峠*3を観て以来自分の中の好き度数が高まっている西村晃氏は、「悪い奴ほどよく眠る」*4的なこずるい中間的な立場を好演。

その下のやくざの兄貴分中谷一郎氏は昭和の「水戸黄門」の風車の弥七の人だった!中谷一郎氏がおびきよせられる場面で出てくる「マンモス城」という名前、見覚えがあるなと思ったらどうも京都・四条大宮のマンモス城らしい。

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 冒頭の瓦屋根、宮川一夫カメラマンらしい美しい場面。

ラストは有名なフランス映画風。(もちろんそのままではないが・・連想させられた。)しゃれてて良い。 

艦隊を追って

 

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「西部魂」*1で気になったランドルフ・スコットの出演作品で、ふや町映画タウンのおすすめにも入っていたので観てみた。

wikipediaのアステアの項目には

アステアがはじめて水兵役に挑戦し、人気歌手ハリエット・ヒリヤードを起用するなど、一連の作品からの脱皮をはかったが、けっきょく最大の人気を博したのは燕尾服姿のアステアとロジャースが踊るラストの「レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス」であった。

 と書かれているが、確かに水兵姿より燕尾服姿のアステアの方がいい。アステアもランドルフ・スコットもえらく若く見えるが、1936年のこの作品、1899年生まれのアステアは37歳、1898年生まれのランドルフ・スコットは38歳のよう・・みた感じはとても若々しい・・アステアが映画に出始めたのが1933年で、1939年まで続くジンジャー・ロジャースとのコンビの全盛期の仕事のようだ。

ランドルフ・スコットはアステアのハンサムな同僚だが、女関係にだらしない引き立て役だった。

船のロマンと踊ることの楽しさ、恋の行き違いを描いた軽いお話。

f:id:ponyman:20210208110613j:plainハリウッド映画で犬が使われるのをよくみる*2がこちらでは子ザル。この子ザルは良きアクセントになっていた。

*1:西部魂 - 日常整理日誌

*2:影なき男」や「新婚道中記」←「新婚道中記」の記事に書いたが二作品に出ているのは有名なSkippyという犬らしい

終身犯、大列車作戦

 

終身犯 [DVD]

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  • 発売日: 2005/09/30
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大列車作戦 [DVD]

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  • 発売日: 2011/06/22
  • メディア: DVD
 

ブラック・サンデー*1を楽しめたことをtweetしたらすすめてもらったフランケンハイマー監督初期の二作品。二作品ともバート・ランカスターが主役の骨太映画。バート・ランカスター、「山猫」の公爵の認識だったものでこの二作品ではそれとは様子が全く違う現役で戦いまくっている男という風情で、出演の年代が離れているのかと思ったが、年代はほぼ一緒。二作品の間に「山猫」が撮られている。*2さらに調べたら「フィールド・オブ・ドリームス*3の物語のキーになるお年寄りも彼だったそう。ちゃんと出演作を追ってきている人は飛び飛びで映画に出会う自分とは全く違った気持ちでそれぞれの映画を観ているのだろうな・・気骨、信念のある男という共通点はあるし、wikipediaで彼の生涯を読んでもそんな感じだ。

両作品ともとても楽しめたが、ナチスからフランスの絵画を守ろうと奮闘する鉄道員たちの戦いを描いた「大列車作戦」の方が見終えた時のインパクトが強かった。敵役のナチスの大佐の執念がただことじゃなく、ラストで言い放つ台詞もとことん芸術への倒錯愛に満ちているし、皮肉交じりの画面の締め方などがつんと来た。

wikipediaによると

ナチス・ドイツによるフランス占領当時のジュ・ド・ポーム国立美術館の館長ローズ・ヴァランのノンフィクション「美術戦線」(僅か3ページの記述)を原作

3pの記述からあそこまでの映画にする素晴らしい手腕。すごく味のある、いかにもフランスの意地を感じさせる機関士にミシェル・シモン。名前は聞き覚えあり・・調べたら「悪魔の美しさ」*4や「霧の波止場」*5で拝見しているよう・・もっとちゃんとわかりたい!

「終身犯」、こちらも実話のベストセラー小説を映画化したものという。バート・ランカスター演じる終身犯が、中庭に迷い込んだ小鳥を育てはじめ、獄中で鳥の病気の対処を研究、その道の権威に。。そのあと獄中結婚をし、小鳥の販売会社も共同経営するが。。というストーリー。獄中で起こしてしまう傷害事件に母親への想いというのがバックにあったり、母親との絆ー結婚による気持ちの行き違いなどが描かれていて、私はこの影がとても気になった。主人公ロバート・フランクリン・ストラウドについてのwikipediaの記述を読んでいると、基本的な事実は大きく枉げることなく、観ているものがいやな気分にならないように作られているなあと思った。映画をみていて、ここまでの待遇・・と驚くことも多かったが、それも概ねその通りだったようだ。そして、それへの不満の声が現実にはあったというのはうなずける。ここまでするか・・という疑問への橋渡し役を映画でしてくれるのが主人公をずっと見続ける看守の存在である。彼が、主人公の横柄さにブチ切れるシーンなかなか良かった。彼というバランスがあってこれが良い映画になっていると思う。

映画のセリフの中であったように、獄中での労働など囚人の性向に関係なく懲罰的な対応をするのでなく、本当の意味で更生できるシステムというのは必要だろうと思う。同じことは老人の施設でも感じている。食べて命を長らえさせればいいでしょうというようにそこで働く人たちが割り切ってしまうようなニヒリズムが一番よろしくないと思う。現実には労働量が多く追っつかないという部分もあるだろうけれど、なんの仕事でもより良くしていこうという気持ちが起きなくなってしまうのは誰にとっても良いものではないなあと思う。

そして自分がなにかの役に立っているという思いはとても大事ではないかな。。

話がそれるが、個性を伸ばす刑務所については宮藤官九郎氏がドラマ「監獄のお姫さま」で舞台に選び、その中にもあるいやな部分も笑いの中でちらっとうまく描いていた。今放映中のドラマ「俺の家の話」も、介護の問題を一見突拍子もない勢いで展開させながら良いところを突いていて高齢者と生き続けている自分には嬉しく響いている。「俺の家の話」、能という特殊な訓練のいる分野の話を部外者たちが演じるおそろしさを覚えたりもしたが、物事の基本をとらえ表現する宮藤氏の才能は凄いものだ。

監獄のお姫さま DVD-BOX

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  • 発売日: 2018/03/23
  • メディア: DVD
 

 

www.tbs.co.jp

どん底

日仏の「どん底」映画を観比べ*1ルノワール版は原作を大胆に変えたといわれているけれど原作はどうだったのか気になって読んでみた。

 

どん底 (ロシア名作ライブラリー)

どん底 (ロシア名作ライブラリー)

 

 読書力がすっかり落ちているので心配だったが、2019年新国立劇場での上演のためにされたこの新訳とてもわかりやすく面白かった。海外文学や古典、それがいいともいえるけれど、初学者にはオーソドックスすぎる言葉の垣根があることが多いけれどそれがとても低い。

たとえば本の裏に印刷されている言葉

仕事もねえし……力もねえ!……これこそが真実だ!居場所が……居場所がねえんだよ!

まさに現在的な感覚。

読んでみて、厳しかった黒澤版、キツすぎると感じた香川京子の扱いなど含め原作にかなり忠実だったんだなと感じた。

黒澤版で目立っていた巡礼(原作ではルカ)、原作でも彼の存在がとても光っている。ルカの物語みたい。黒澤版でも阿弥陀如来への導き手のように感じたが、こちらでも宗教的なものに衆生が近づくため語り掛ける存在として感じられた。黒澤版の左卜全さんの姿を思い浮かべながらずっと読んでいた。

年代も地理的にも離れたロシアの戯曲、読んでいる間全然退屈しなかった。

訳者の安達紀子さん、京都産業大学のご卒業。産大のサイトに載っている卒業生からのメッセージ楽しく拝見した。

www.kyoto-su.ac.jp

冬のアラカンさん祭

ラカンさんの映画を二本鑑賞。

中川信夫監督「私刑(リンチ)」(1949)と丸根賛太郎監督「右門捕物帖まぼろし変化」(1954)。

 

movie.walkerplus.com

 

eiga.com

 

驚いたのは、中川信夫監督の「私刑(リンチ)」。なんとも凄惨なタイトルだが、アラカンさんの人間的魅力が溢れとても楽しめた。奉公人ではあるが、洒脱なアラカンさんが悪い連中のせいで追い込まれ、途中アル・パチーノの「カリートの道」を観ている時のごとき祈るような気持ちでハラハラと鑑賞。

ラカンさんが自動車を運転したり、ミシンをかけたりなどというシーンもあり、走るアラカンさんはあれど剣を振り回すところはなかったから多分チャンバラ禁止令下での姿だったんだろうな。中川信夫監督作品*1でよく感じる温かみやユーモアも漂う。

右門捕物帖 まぼろし変化」の方はチャンバラ劇としての楽しみがあった。「網走番外地」や「ダイナマイトどんどん」という後年のアラカンさんから漂う飄々とした空気からアラカンさんを好きになった自分だが、時代劇の本などを読んで、最近はアラカンさんの立ち回りの美しさとか身体的な動きに目がいくようになった。歌舞伎の舞台での見せ場のような楽しみ方。

こちらでは右門のライバルあば敬に戦前の小津安二郎映画の喜八おとっつあん、坂本武。

f:id:ponyman:20210202165817j:plain髷を結った姿、珍しく感じた。