おれの行く道

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衛星劇場にて。

アイドル街道をまっしぐらだった西城秀樹田中絹代 の共演映画。(西城秀樹の出番は少ない。)映画自体のテーマは田中絹代の財産をめぐる家族の底の浅いお話だけど、家で家事手伝いみたいな立場の次女(夏純子という方らしい)が、撮影隊にぽーっとなって、女優を目指そうかななんて夢をふくらますシーンで、河原崎長一郎が投げ捨てるようにいうのが「気でも狂ったか!?」と一蹴するセリフ。昭和の家長という感じで新鮮。女優にあこがれる孫の話をきく田中絹代。田中さんのフィルモグラフィーが勝手に走馬灯のように駆け巡り、妙にぐっときた。よく、ふや町映画タウンの大森氏と話すのだが、がんばりすぎる田中絹代はしんどいが、「サンダカン八番娼館」みたいに肩の力の抜けた、老境の田中さんはいいなあと。この映画の田中さんやっぱりすごくいい!「サンダカン八番娼館」でもいいなあと思っていたけど、あの頃の田中さんの仕事もっと追いかけたくなってる。

まだ幼顔の残る若き池上季実子も一途な西城秀樹の妹役で出演。

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75年当時のおばあちゃんファッションも懐かしい!

そして、舞台は成田。空港のフェンスの前の畑なども映っている。最近も三里塚の映画であの畑みたなあ。成田で撮影という部分も心に残る。空港と不動尊をバランスよく映す。

 

 

おれの行く道 [VHS]

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 6/28に再放送あり。

恋の大冒険

s45 羽仁進監督作品。今陽子が上京してきて、インスタントラーメンの会社の寮に入ったり、街中でミュージカルシーンというところは、平成の朝ドラ「ひよっ子」的世界。和田誠のイラスト、皆川おさむ、前田武彦土井まさる佐良直美熊倉一雄と当時テレビでなじんでいた面々が大活躍。テレビの「ゲバゲバ90分」的世界。動物の出番は監督がドキュメンタリー「動物園日記」(1957)を撮られた経歴も関係するのかな。

 

濡れた壺

 1976年3月公開の小沼勝監督作品。谷ナオミ氏のおさえにおさえた演技+和服のうなじ、マネキン工場でのいたぶりが印象的。周りの女たちとの見事な対比。冒頭映る新宿の場外馬券売り場(東口と南口をつなぐガードレールの下)が懐かしい。谷ナオミの父が一見大人しい初老の男なのだけど、普段は競馬ですっては借金を作り、戦友と羽織袴で靖国神社を詣で飲むことだけが楽しみという設定。小津安二郎監督の「秋刀魚の味」(1962)*1笠智衆たちが岸田今日子のバーで軍歌を歌っていたのを思い出す・・もともと気の弱い人間がそのあと・・という話の流れになっていて、戦争帰りがまだまだ身近な時代、そして、一方では谷ナオミの弟が長髪の浪人という設定になっていて、この二人が共存する時代、70年代を感じた。田中小実昌が酔っぱらいの役で登場。作品に奥行きが感じられる。中丸信氏が「花芯の刺青 熟れた壺」*2(同年、こちらの方が9月であとの公開)にも似た歌舞伎の好きな父がいる御曹司の役。(「花芯~」の方では歌舞伎役者の息子)。すっとした顔立ちにぴったりの役回り。歌舞伎のチケットに「団菊祭」とみえたような・・幕切れもシャープ。

濡れた壷 [DVD]

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港町

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想田監督の映画、「選挙」*1で出会い、「演劇1、2」*2を経て、「選挙2」*3、「牡蠣工場」*4と追いかけてきた。牛窓の港町で普通に暮らしている人々を撮ったこの作品は「選挙」のシリーズや「演劇」のシリーズのようなインパクトはなく、人員が足りないゆえグローバル化を余儀なくされている牡蠣の処理場を撮った「牡蠣工場」寄りの作品だ。(舞台も同じ牛窓だった。)けれど、「牡蠣工場」ではいきなりそこに配属された外国人のような気持ちになったのに、この映画は、この町に受け入れられているような感があり、ひきこむ力が強かったように思う。「牡蠣工場」での人間関係は労働力のやりとりメインのものだけど、「港町」では、いろんなひとがいるけれど、とにかくここで生活しているということは共通という人々の姿をごく平等に天からの眺めのように描いているからかな。この映画では、個性的なおばあさんとの出会いがあり、「ゆきゆきて神軍」とまではいわないが、その熱量が画面を引っ張っている。まるで寂しがり屋の保育園児のように一生懸命話しておられるがそれはこのおばあさんの頭の中の現実であって・・・と思うときもあり、最終的にはそんなことはどっちでもよくなるこの感じ、フェリーニの「8 1/2」ばりの大団円みたいにもみえる。個性的なおばあさんの強い語りの後ろで「ノーコメント」みたいな顔をしている(何しろ自分の家の噂話をカメラの前でされているものだから)別のおばあさんの表情を撮ったりしているのも面白い。

港町 [DVD]

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お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました

 

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映画館でこの恐ろし気な、母親という立場の人間からしたら揺さぶられるようなポスターを目にして一旦全体・・などと思っていたのだけど、その後、これは私の好きな人たちもリスペクトしている遠藤ミチロウさんという人の映画で、彼はザ・スターリンというパンクバンドを主宰し、また、福島出身ということで震災のことにも触れているというようなことを少しづつ知り、日本映画専門チャンネルでの放映を機にみてみた。

まとわりつくような家族というものが苦手で、お若い時のザ・スターリンのビデオクリップなどでも、日常生活を破壊するようなものを作っていた、その感じはわかるなあ。

素顔のミチロウさんは深く思索する静かな人で、吉本隆明さんの本から島尾敏雄さんに触れ、島尾さんのお墓(先祖代々の)が福島にあることから縁を感じられ、島尾さんが従軍した奄美にまで出かけられた。そして、奄美の立場、日本の中央政権に対し、決して対等なつきあいができたわけでなく、わりを食わされ、虐げられている感じに福島と共通したものを感じておられていた。私自身もこの映画を通して島尾さんの経歴をみていると、自分の周囲と関係しておられる項目が多々。一歩近づいた気持ち。

終戦の日に広島でライブを行うことや、プロジェクトFUKUSHIMAなど、自分の信念を形にあらわす、自分の生命に対して真面目な生き方も画面にあふれていた。もう少し早く御存命中にみておいて、ミチロウさんの活動にさっさと注目しておきたかったな。

 

書くことの重さ~作家 佐藤泰志

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このドキュメンタリー、一度日本映画専門チャンネルで途中からみてひきこまれるものがあり、再放送で最初からみた。確かに昨今佐藤さん原作の作品がたくさん映画化されていてしかも評判がいい。不勉強ゆえ私は佐藤さんの本を読んだことがなかったが、読みたい気持ちになった。

芥川賞の選考委員会の再現フィルムみたいなのがあったが、なんだかこの映画の視点でみると、普段は割合近い人からエピソードなど聞いて勝手にほのかに好意を持っていたのに、開高健氏のイメージが少し変わりそうな気分に・・

やはり賞の選定というのは残酷な部分あるなあ。太宰が川端康成に書いた手紙や未読だけど内容だけきいている筒井康隆の「大いなる助走」などが頭によぎる。

しかも再現フィルムの開高さんの関西弁も少しおかしかったし、これは、開高さんご本人とは関係ない事なんだが、関西人の人でそういう人多いと思うのだけど、おかしな関西弁をきくとそれだけでかなり減点処理を脳が行ってしまって何やら本日は坊主にくけりゃ袈裟まで的にひどいな・・選考委員会と思ってしまった。

再現フィルム上で丸谷才一氏がかっこよかった。(この映画では佐藤さんに好意的な人はかっこよく描かれているきらいもある。)安岡章太郎氏や遠藤周作氏、井上靖氏も割合特徴とらえていてそこらへんは面白かった。

 

解散式

 

解散式 [VHS]

解散式 [VHS]

 

 鶴田浩二が8年の出所を終え、出てきてみたら、元いた組織は解散、元いたシマはコンビナート群建設の利権を巡って親分筋と弟分筋が抗争。鶏小屋のあるそのシマの描き方に、「狼と豚と人間*1に出ていたあの人たちが形をかえてここにいる、というような気持ちになった。旧きやくざの様式美もみせるが、近代やくざ(という形だが広く近代そのもの)の犠牲になる人々の暮らしの描き方がさすが深作監督。「軍旗はためく下に」*2や「仁義なき戦い*3ともつながるものあるなあ。旧式の美をみせてくれたのは、いつも着流しの二人ー鶴田さんと元敵役丹波哲郎氏。丹波氏の純和風にかっこいい場面というの珍しい気がした。