ヴィジョンズ・オブ・ライト

 

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無声映画時代から80年代半ばくらいまでの撮影監督の仕事の歴史を作品と撮影監督へのインタビューをまじえてまとめたもの。

狼たちの午後」「アニー・ホール」「グッドフェローズ」「暗殺の森」など好きな作品はちょっと引用されているだけでもうっとりとひきつけるものがあるなあ。

天国の日々」も30年以上ぶりくらいでみたけれど、本当に美しい画面だなあ。マジック・アワーばかりで撮った贅沢な映像の話。ネストール・アルメンドロスという撮影監督。途中でトリュフォーの撮影に入って撮影監督交代とのこと。

印象に残っているのは「市民ケーン」でオーソン・ウェルズが自分の名前と撮影監督の名前を並べた話。撮影監督について、気にはなっていたけれど、まとめてみることが出来、面白かった。とても勉強になったし手元においておきたいくらい。まだまだみていない歴史的な作品が多いなと痛感。。

 

言及されていて未見のものメモ。あまりにもたくさんでメモが追っつかなかった。手元にあって、安心してしまい、なぜこれをまだ観てないの?というようなものも・・もったいなし・・

ドイツ表現主義の映画ほとんどみていないのだけど、光と影のはっきりした表現に惹きつけられるものがとてもあったし、ちゃんとみたい。

 

デヴィッド・リーン監督の「オリヴァー・ツイスト」(1948)

東への道」(1920) リリアン・ギッシュの熱演

「ナポレオン」(1926)

サンライズ」(1927)

「ゴールド・ディガーズ」(1933)←俯瞰で撮った美しいミュージカル場面に魅せられる

「椿姫」(1936) グレタ・ガルボ。当時の俳優、女優は撮影監督を指名できるほどだった。美しくみえる方向からの撮影。

真珠の首飾り」「上海特急」 ディートリッヒの撮影、美しくみえるため明るい光をあてて。。

「肉の蝋人形」(1933) テクニカラーの風合いが面白い

「果てなき航路」(果てなき船路)(1940)

若草の頃」(1944)

「殺人者」(1946) ドイツ表現主義の影響

過去を逃れて」(1947)私が割合苦手とするフィルムノワールだが、評価高し・・

「情熱の狂想曲」(1949) ジャズもの。流れている音楽も良かった。最近ぽつぽつ見ているドリス・ディも出てくる

狩人の夜

「Tメン」(1947)

ビッグ・コンボ」(1955)

「ピクニック」(1955) シネマスコープ

「成功の甘き香り」(1957)

ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」←前から気になっていたが、ドキュメンタリータッチで撮ることに監督含め危惧があったそうだが、エリザベス・テイラーのプッシュで実現したとか。流れていた画面もよかった。

「ハッド」(1962)←私の好きなポール・ニューマン主演

アルトマンの「ギャンブラー」(1971)色あせたカラー写真風にという監督の強い希望。撮影監督自体は、その調子に少しあきかけたが、アルトマンは譲らなかった。

ゴッホ 最期の手紙

 

ゴッホ 最期の手紙 (字幕版)

ゴッホ 最期の手紙 (字幕版)

 

ゴッホの絵のタッチで表現されているアニメーション。ゴッホがみていた世界はこういう風ではなかったかなという試みを感じる。草間彌生さんの絵画も彼女にはそのようにみえているのを忠実に表現しているという説をきいたことがあるが、あの点描がチラチラする画面をみていると、ゴッホの人生の困難さの一部を体感している気分になる。この作品は医師ガシェという晩年の傑作のモデルの人物とゴッホの最期の関わりを描くミステリーみたいになっているが、草間彌生さんのデビューも精神科医の西丸さんという方経由でゴッホ研究で有名な式場さんという方が関わっていたという話を読んだりすると、感応する力の存在を感じたりもする。

千鳥百年

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田中千鳥という大正時代に七歳で夭折した鳥取の詩人の詩を「徘徊 ママリン87歳の夏」*1の田中監督が映像で表現したもの。鳥取県下初の女性新聞記者であった母が「千鳥遺稿」というものを残していたから彼女の作品が世に残った。幼い我が子ではあったけれど、独立した自分と違う人格ときちんと認めていたことが遺された文章から感じられる。ちょうど今大河ドラマ「いだてん」でも大正時代、女性が少しづつそれまで制限されていた枷を解き放とうとしているところだが、この千鳥のお母さんの生き方や、去年の夏みた映画「菊とギロチン*2にもそういう時代の空気を感じる。自由を求めることがされはじめそして最終的には剥奪されていく時代の流れ・・せっかく今ある自由を無関心のまま失ってしまいはしないかと、民主主義の盲点も感じる現在、あの時代を生きた人々がみていたら歯がゆいのではないだろうかと思ったりもした。

千鳥さんについてはそれまで大好きだったイソップ物語を「アリとキリギリス」のアリの不人情さから嫌いになってしまったというエピソードに共感するものをおぼえた。どちらかというと日々アリのような暮らしをしている自分だし、破天荒な人の自由さがまぶしかったりもするけれど、自己責任論がはびこっている現代はいい方向ではないなと日々感じていて、千鳥さんのこの感性、尊いものと感じた。

冒頭にことばの力に対してのひとのいのちの儚さを感じさせるような無縁墓のシーンがあるのだけど、そろそろ我が家の墓じまいを考えている自分には妙にドキっとするシーンだった。

 

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今日はその上映会とそれに先立ち鈴江先子さんという方が千鳥をイメージして作った曲などのオカリナライブが京都五条のlumen galleryであった。町屋を改装したクラシックな建物。一階の喫茶も心地よさそうだった。

会場に父の大学映画部の方が来られていておはなししたが、映画のはなしというのは垣根を越える共通語になりうるなあと感激。五条から麩屋町通を上るのだけど、すぐそばに大喜書店という、しゃれた店構えの本屋さんも。建築家のための書店ということだったけれど人がたくさん入っていた。また改めてのぞいてみたい。

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パジャマゲーム

 

パジャマゲーム [VHS]

パジャマゲーム [VHS]

 

 パジャマ工場の労働争議をラブコメミュージカルにしたもの。ドリス・ディってちょっといかついなあと思うけれど当たり前だが声は最高。組合の闘士という役なので違和感はない。

芸達者が揃っていてカラフルな衣装を着ての群舞などみていて楽しい。聞いたことのあるようなナンバーも多い。


Doris Day - I'm Not At All in Love (The Pajama Game)

 

男装

 

男装 [VHS]

男装 [VHS]

 

 キャサリン・ヘップバーンの男装のかわいいこと。やはり彼女主演の「偽装の女」*1もなりすましのコメディーだったが、こちら(の方が製作年度先で、脚色がモーティマ・オフナーという同じ人)も、父の借金取りから逃げるために息子を装う娘の話。そんな小手先・・って感じだけど、なんとも魅力的。「偽装の女」では、手塚治虫の「リボンの騎士」のサファイアや「ベルサイユのばら」のオスカルのようなものを感じたが、この映画での彼女は「リボンの騎士」でいえばチンクみたいな、中性的でこどもみたいな魅力を感じた。

TOO YOUNG TO DIE 若くして死ぬ

 日本映画チャンネルの軽部真一が司会している日曜邦画劇場の枠で放映していたもの。宮藤官九郎作品は好きで、大河ドラマ「いだてん」も毎週楽しみにして見ているのだけど、こちら、宮藤氏の好きな若い人の評価がまあまあでみるのが遅くなった。多分ロックが好きで知識があった方がより楽しめると思う。往年のロックギタリストのギターの弾き分けやセリフに込められているロックネタ、こんなところにみうらじゅんが、みたいな楽しみ方など。(みうら氏の場面セリフもなくなかなか愉快だった。)

軽部氏によると、宮藤氏はこの映画木下恵介の「楢山節考*1の演劇的なセットに影響を受けたとか・・中川信夫監督の「地獄」*2は思い出し、あと、少ししかみていなく言及するのは、はばかられるけれど神代監督の「地獄」も平面的な画づくりみたいなものを感じたのでその辺を踏まえてのクドカン流の「新・地獄」みたいな感じかなとは思っていたけれど・・(多分テーマがテーマだけに有名な二作品はみておられるだろう。)

クドカン作品、映画よりTVドラマの方が出来がいいように思うのだけど、TVドラマの規制で抑制がきいているところがいいのかも・・ティーンエージ男子っぽさが炸裂しすぎて、ところどころひいてしまう。でもそれなりに愛すべき感じはあった。

軽部氏が、「神木隆之介を思いきりかっこ悪く撮っている」というような話をしていたが、確かにクドカン作品は、かわいらしい子役だった神木君のイメージをくつがえすようなものばかりだな。ドラマ「十一人もいる」とか最たるものだけど宮藤氏は、いつもそれまで光をあててないその人の持つかっこ悪さの中のかっこよさをひきだすの長けているよなとも思う。

コミック雑誌なんかいらない、嗚呼!おんなたち猥歌

 

コミック雑誌なんかいらない デラックス版 [DVD]

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 みたのはVHS版

 

 

嗚呼!おんなたち猥歌 デラックス版 [DVD]

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 どちらも内田裕也主演で印象が重なる二本。「嗚呼!~」の方が先に作られ(81年、「コミック~」の方は86年。)、「嗚呼~」の方にも内田裕也の「コミック雑誌なんかいらない」という曲が使われている。「嗚呼!~」では安岡力也が内田裕也の子分役、「コミック雑誌~」の方にも出てきている。

コミック雑誌~」の方は、内田裕也梨本勝の口癖「恐縮です」を連発するレポータ役。(梨本本人も出てくるし、内田裕也は木滑という、マガジンハウスの編集者の名前を使っているらしい。)最近のあの長髪っぽい髪でなくサラリーマンでも通用するくらいの髪型。「コミック雑誌~」の冒頭髪を調髪するシーンが出てくるが、落ち着いていて、たけしか?と思った。「コミック雑誌~」は80年代半ばの出来事、ロス疑惑日航機墜落や、聖輝の結婚、おにゃんこクラブ、豊田商事事件などとことん盛り込んで懐かしい。豊田商事の犯人役のたけしが大層迫力があり、あの映画の中で一番のみどころのように感じる。豊田事件風のものへの導入として普段内田裕也がつきあっているおじさんが金の商法に騙されて・・というのがあるのだけど、そのおじさん役が殿山泰司。殿山さんの安定感が画面を引き締めていた。

「コミック~」の冒頭、桃井かおりが、内田裕也扮するレポーターに追いかけられ、黙殺していたが、wikipediaによると、高平哲郎氏との交際を問い詰められていたらしい。そうだったのか!最近高平氏のお仕事に触れはじめ、もっと知りたいと思っているところだった。お二人のことは知らなかった。

VHSの表紙も内田裕也がスーツを着て泳いでいるところなんだけど、そのシーンはなかったような。。85年のパルコのCMの姿を表紙に使っているのかな?


1985年CM パルコ 何時間生きていましたか? 内田裕也

「嗚呼!~」の内田裕也はロック歌手。最低の所業。現代の目で見るとたまげるような流れも。だけどむなしさも漂っている。関係する女性の方がずっとたくましい。若き看護士役中村れい子という人が魅力的だった。