千鳥百年

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田中千鳥という大正時代に七歳で夭折した鳥取の詩人の詩を「徘徊 ママリン87歳の夏」*1の田中監督が映像で表現したもの。鳥取県下初の女性新聞記者であった母が「千鳥遺稿」というものを残していたから彼女の作品が世に残った。幼い我が子ではあったけれど、独立した自分と違う人格ときちんと認めていたことが遺された文章から感じられる。ちょうど今大河ドラマ「いだてん」でも大正時代、女性が少しづつそれまで制限されていた枷を解き放とうとしているところだが、この千鳥のお母さんの生き方や、去年の夏みた映画「菊とギロチン*2にもそういう時代の空気を感じる。自由を求めることがされはじめそして最終的には剥奪されていく時代の流れ・・せっかく今ある自由を無関心のまま失ってしまいはしないかと、民主主義の盲点も感じる現在、あの時代を生きた人々がみていたら歯がゆいのではないだろうかと思ったりもした。

千鳥さんについてはそれまで大好きだったイソップ物語を「アリとキリギリス」のアリの不人情さから嫌いになってしまったというエピソードに共感するものをおぼえた。どちらかというと日々アリのような暮らしをしている自分だし、破天荒な人の自由さがまぶしかったりもするけれど、自己責任論がはびこっている現代はいい方向ではないなと日々感じていて、千鳥さんのこの感性、尊いものと感じた。

冒頭にことばの力に対してのひとのいのちの儚さを感じさせるような無縁墓のシーンがあるのだけど、そろそろ我が家の墓じまいを考えている自分には妙にドキっとするシーンだった。

 

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今日はその上映会とそれに先立ち鈴江先子さんという方が千鳥をイメージして作った曲などのオカリナライブが京都五条のlumen galleryであった。町屋を改装したクラシックな建物。一階の喫茶も心地よさそうだった。

会場に父の大学映画部の方が来られていておはなししたが、映画のはなしというのは垣根を越える共通語になりうるなあと感激。五条から麩屋町通を上るのだけど、すぐそばに大喜書店という、しゃれた店構えの本屋さんも。建築家のための書店ということだったけれど人がたくさん入っていた。また改めてのぞいてみたい。

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