軍旗はためく下に

昭和47年のこの作品、今これだけのものが作れるだろうか?遠慮もなにもなくシャープに、そして、夫の死の真実をただ知りたい戦争未亡人の左幸子をうまく使って、ごく身近に、戦場ひいては人間同士の集まりの現実を共有できるようになっている。ずしんときた。
キーになる人間、三谷昇のすごいこと。丹波哲郎も私がみた丹波さんの映画の中で一、二を争う重厚さ。(過剰なところ全くなし。)
こちらのブログもすごく頷きながら読ませてもらったのだけど、中村翫右衛門の憎々しい事。うまい!ポール牧と関武志のステージや楽屋の使い方、撮り方もすごくどこかを刺激される不思議な魅力。
絶対今多くの人にみてもらいたい映画だ。戦争ものといっても、ドンパチ火薬が景気いい話じゃ全然なく、地に足着いた、そして豊かになった時代との明暗が突き刺さる。学徒出身という事で過剰に残虐になっていく少尉なども、そのようになってしまう心持ちがなにかわかる気がしてとにかく色々なものをつきつけられ、覚醒させられた。
ただ一つ気になったのは平成の世になってからみると、個人情報の取り扱いは当時こういう感じだったのかな・・ということ。でもそんなことは細かな話でこの映画に流れる精神がとにかくすごい。こういう映画をみてからだと「バトル・ロワイヤル」のつきつけてくるものもまたさらに意味深く感じられるし、深作監督のこともっと知りたくなった。

軍旗はためく下に [VHS]

軍旗はためく下に [VHS]

  • 発売日: 1987/07/01
  • メディア: VHS