濡れた壺

 1976年3月公開の小沼勝監督作品。谷ナオミ氏のおさえにおさえた演技+和服のうなじ、マネキン工場でのいたぶりが印象的。周りの女たちとの見事な対比。冒頭映る新宿の場外馬券売り場(東口と南口をつなぐガードレールの下)が懐かしい。谷ナオミの父が一見大人しい初老の男なのだけど、普段は競馬ですっては借金を作り、戦友と羽織袴で靖国神社を詣で飲むことだけが楽しみという設定。小津安二郎監督の「秋刀魚の味」(1962)*1笠智衆たちが岸田今日子のバーで軍歌を歌っていたのを思い出す・・もともと気の弱い人間がそのあと・・という話の流れになっていて、戦争帰りがまだまだ身近な時代、そして、一方では谷ナオミの弟が長髪の浪人という設定になっていて、この二人が共存する時代、70年代を感じた。田中小実昌が酔っぱらいの役で登場。作品に奥行きが感じられる。中丸信氏が「花芯の刺青 熟れた壺」*2(同年、こちらの方が9月であとの公開)にも似た歌舞伎の好きな父がいる御曹司の役。(「花芯~」の方では歌舞伎役者の息子)。すっとした顔立ちにぴったりの役回り。歌舞伎のチケットに「団菊祭」とみえたような・・幕切れもシャープ。

濡れた壷 [DVD]

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