ドキュメンタリーを観る側が堪能できるかどうかって作り手がいかにおもしろい素材を揃えてきてどうつなぐかというセンスにかかっていると思う。1年半の撮影期間、300時間を超す映像素材からこの映画が作られたようだけど、素材の取捨選択の仕方、みせかたがとても優れているのが想田監督だと思う。1,2あわせて、6時間近くあるドキュメンタリー、観だしたらとまらない。フェイドアウトの仕方、ところどころ音声をいれない異化の効果がまた優れている。
「演劇1」は、舞台の作り方中心。せりふのタイミングが秒単位で決められ、きっちり守ることを要求される俳優たち。大道具の配置なども想像以上に緻密な計算のもとに行われている。
NHKの「ハゲタカ」や「鉄の骨」などの渋めのテレビドラマで気になっていた俳優さんが志賀廣太郎という人で、平田オリザ率いる劇団青年団の一員ということも知る。(wikipediaによると講師として教材使用を申し出たところからの入団との少し変わった経歴)また、「植物男子ベランダ―」などに出てくる古舘寛治氏も団員。
「演劇2」は、劇団を回していくために積極的に地方や海外の各種イベントに参加し、文化庁に予算の申請をし、など財政面でがんばっている平田オリザの姿が中心。「人の心を弱らさないための芸術保健 3割負担で舞台が観られたらどれだけのたましいが救われメンタルケアになるか」なんてまじめな顔をして語っている姿。なんだか人をひきつける話術。必ず相手もこれだけの利益があるということを話をするそのたくみさ。演劇青年という言葉から受ける、芸術で食っていけるものではないというあきらめたイメージでなく、みていて楽しい。なんか一緒にしてはいけないが、ディカプリオの「ウルフ・オブ・ウォールストリート」*1をみたときのおもしろさに通じるものまで感じる。
「海外では客を呼べる演出家と思われている感触を受けるのに、日本では客の入らない劇団とされている」というつぶやきはウディ・アレンが「自分の映画はヨーロッパではウケるがアメリカの興行収入は・・」と語っている姿を思い出し、あれは自嘲の体裁をした営業だったか・・と今頃気がついたり・・
「演劇2」に出てくる阪大で行ったロボット演劇。なかなかおもしろい。平田オリザは「1」の方でも徹底的に間合いを大切にする作り手であることがアピールされていたが、それにピッタリだ。役者はペルソナであって・・という考え方は小津安二郎の映画の撮り方にも相通じる気がする。
想田和弘監督、今年公開の「牡蠣工場」のポスターにも猫が出てきて、この「演劇1,2」でも猫のシーン多数なんだけど、やっぱり観察映画ということで、ただ横でみている、という意味での猫なのかなあと思ったりする。
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