パターソン

 

パターソンというのはどうも実在の街らしく、劇中に出てきたウィリアム・カルロス・ウィリアムズ(「パターソン」という叙事詩を発表)、アレン・ギンズバーグや「アボットコステロ」のコステロの出身地であるらしい。

主人公はパターソンという街のパターソンという名のバスの運転手。どこにも発表していない詩を日々綴り穏やかに暮らしている。彼はパターソンという街そのものともいえそう。

パターソンは詩を作ることが人生の支えで家庭での、職場での、酒場での小さな違和感も詩を作ることで昇華させている。

詩はそんな彼の「職業」ではないか、そして、これを観ているアマチュアたちが人生を賭けて熱心に取り組んでいることも「職業」と呼んでよいのではないか、そんなことも語りかけてくれているような作品。

バスの運転手らしい、そしてジャームッシュらしい、ベタベタしない人と人の出会いの余韻が心地良い。

ジャームッシュの作品、一番最初に出会った「ストレンジャー・ザン・パラダイスからして、「盛り上がらない日常もいいんじゃないの?」ってことそして袖振り合うも他生の縁的な人間関係をとてもかっこいい映像と音楽で提示してくれる清々しくもありがたいものだった。

この作品は自分にとっても2018年に旅立った友人が余命宣告されている時に映画館でこの作品を観、ほめていたことが心に残っていて、いつか観ようと思っていたもの。なんとなく気持ちが不安定だったこの夏、今が観るときかしらと鑑賞。期待通りふんわりと元気づけられた。