ノンちゃん雲に乗る

 

タイトルは子どもの頃から知っていて、ノンちゃんという女の子が雲に乗って冒険するたのしいお話かな、読んでみたいなと思ったまま50年以上が経過。

ところが映画を観てみると、すごい悲しみを抱いた鰐淵晴子演じる美少女ノンちゃんが泣きながら木に登りそこから池に落ちて、気がつけば雲の上で徳川夢声演じる老人に会うという、これはひょっとして重篤な状態では?というところからのスタートで驚いてしまった。

鰐淵晴子はバレエが出来、バイオリンの弾ける本物のお嬢様という感じ。原節子の再来とも言われたそう。このお話の中でも原節子がお母さん役でとってもしっくり。

徳川夢声の傾聴によりノンちゃんの心の中はよくわかったが、ストーリー展開は理詰めで考えてしまうとよくわからないところがあった。が、さらにゆっくり考えると、そういうものかもしれないと思いなおせた。何しろ主体は池に沈んだ後のノンちゃんだから。天上のシーンのローテクな美しさ、そしてモダン中流家庭の佇まいの味のあること。魅力のある作品だった。

バイオリンを弾く謎の若者役の大泉滉も良い味。