白痴(1951)

ドストエフスキー作品の黒澤監督による翻案もの。当初の上映時間よりかなりカットされて(265分→166分)いるという話。どこをどうカットしたのかよくわからないけれど、確かに冒頭あらすじが文字で説明されたり、パッと見では事情が呑み込めなかったりした部分があった。

原節子演じる那須妙子(原作のナスターシャ)というヒロインは黒鳥のような凄みのある美しさ。小津映画で原さんに先入観ができてしまっているせいか、彼女が椿姫的な存在というのが理解しきれてなく、なんで千秋実氏が金銭目的で原さんと結婚しようかどうしようかと渋ったりするのかピンとこなかった。圧倒的に綺麗だったから。

ストーリーに入り込むのは難しかったが、ロケ地や撮影の美しさはとても観る価値があった。一番印象的だったのは氷上のカーニバルのシーンだが、札幌の中島公園というところで1925年から1975年まで続いたものらしい。↓カーニバルの写真が載っている。

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上の記事にも載っていたけれど、映画の中でのお面をつけたカーニバルの幻想的でおどけているのやらこわいやら・・みたいなシーンは本当に素晴らしい。「禿山の一夜」の音楽がぴったり。先日観た黒澤明のメイキングドキュメンタリー*1でオリジナル曲を作るのでなくありものを使う方がいいときもあるという意味の話が出ていたことを思い出す。

後ろ向きに原節子がスケートで立ち去る短いシーンもあったがかっこいいこと。

舞台には主演を演じた森雅之の父、有島武郎旧邸も使われていたそうだ。森雅之、私の中の一番のベースのイメージは「浮き雲」での高峰秀子のくされ縁の相手だが、こんな無垢な役も、そして「悪い奴ほどよく眠る」*2などでは、すぐにはわからなかった老練な役も。みなさんがほめられる一端をじわじわと感じている。

東山千栄子が、富裕なのにちょっとがさがさした母親役をしていたが、ポンポンあけすけな台詞は杉村春子氏や吉川満子氏が演じた方がナチュラルでみているものも違和感ないように思った。

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