曼陀羅

 

1971年実相寺昭雄監督。学生運動の果て、空虚に陥っているような二組のカップル。片方は宗教集団的なものに救済を求めそこで共同生活を始めるが、エロスと犯罪と集団ヒステリーが混ざりあったような空気はヒッピー的で「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」*1で描かれていたマンソン・ファミリーを思い切り国粋的にしたよう。

学生運動からの気持ちの空洞化のあの時代に大人ではなかったけど生きていたからこの作品の持つ悲壮感がなんとなく理解できたけど、平成生まれ令和の日々を忙しく生きる娘なんかにはこの作品どううつるのかな?などとも思う。

そもそものおこりになる日本海側と思われる海岸(敦賀と書いてあるものもみた)のモーテルや海、隠遁生活を送る竹の中の日本家屋の映し方は実相寺監督らしくもあり70年代ATG風でもある凝った感じで惹かれる。結社の人間たちによる儀式をモノクロで撮影しているところも中にいる人間の懸命さやそれしか視えない感が出ていてなかなか良い。ただ結社の主宰者岸田森が活躍するたびにかかるバロック音楽は同じ旋律の繰り返しでちょっと単調に感じられもしてしまったし、教義等は荒唐無稽で戯画的。

京都鴨川デルタのあたりで学生運動の面々の自己批判を迫るやりとりなども映る。終始関西のイントネーションで話が進んでいく。俳優さんによってはちと気になる発音もあったが。

現実浮遊感のある画面が続く中、現実感満載の菅井きんの大写しや下宿の大家の京おんなの風情が面白い。