こんな映画が、

行きつけのvhs専門レンタル店ふや町映画タウンが20周年ということで数少ない(というのも随分婉曲表現)常連さんとふや町映画タウンで出会った作品の数々をtwitterで挙げていってる。

ラース・フォン・トリアーの話題になって、ふや町映画タウンのおすすめリストにも挙がっている「奇跡の海」が未見だったもので鑑賞。

エミリー・ワトソン、「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」なんかでエキセントリックな主人公を演じるのがうますぎて、彼女とフォン・トリアー監督かーと二の足踏んでいたが。。これは観て良かった。

冒頭から思い詰めすぎてちょっと大丈夫?とかこういうことするんだーという違和感も醸し出しつつの彼女、自分流にすごい真面目に神と対話していてその姿をみているうちに、とんでもないんだけど聖人とかこういうタイプもいるのでは?という気持ちになってくる。手持ちカメラのドキュメンタリー風の撮影も良くて、すべてが妙にリアル。結婚相手のヤンとか、俗っぽい人間?と思いきや彼女の聖性にひきずりあげられたりして、自分の中の二分法はずっと揺さぶられ続ける。章で区切られていて各章冒頭にかかる70年代ソングも良く、あの場面のおかげでちょっとこっちも落ち着ける感じもいい。いままで、ちょっとキワモノ的な見方をしていたフォン・トリアー監督、なかなかどうして!がつんとくるじゃないか!と今頃の発見。

吉野朔実さんの「こんな映画が、」という本でもこの映画のこととりあげられていたなと持っている単行本版でみてみたら

またとてもかわいいイラスト

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吉野さんのこの作品への視点も嬉しい。

 

でもう一作、吉野さんの本に載っていたので鑑賞したのがアトム・エゴヤン監督の「フェリシア」。(本の中では劇場公開時の「フェリシアの旅」と紹介。)

 

 

細かいセットはとてもいいしシリアスなんだけど不思議なユーモアも漂い中盤まで大いに良い。アイルランドーイギリスの心の垣根も体感。ただ中盤からは「手紙は憶えている*1アトム・エゴヤン 監督だからとの自分の期待に少し負ける結果だったかな。。これは斎藤美奈子のいうところの「妊娠小説」=妊娠にまつわる物語。原作者イリアムトレヴァーはとても評判が良い方らしく、映画と原作の差はわからないのだけど妊娠に関する扱いは今現在の自分がみるとこういう展開か。。ふーむという気持ちになった。この映画の作られた90年代だったら自分の年齢も主人公フェリシア寄りですんなり受け止めたかもしれないけど、いろいろみてきた結果のいまの自分は、中盤まで入り込ませてもらってたのに、結局こういう感じで終了?という気持ちが残った。

フェリシアがイギリスで出会う上品そうな初老の男を演じていたのがボブ・ホスキンス。「モナリザ*2や「恋する人魚たち」で人の良さそうな役の似合ってた彼。これはピッタリのキャスティングだし、フェリシアアイルランドの無垢な少女という感じが良かった。問題は終盤にかけての流れだけかな。。ボブ・ホスキンス演じる男自身の抱えている問題と関わっているし、アトム・エゴヤン、「スウィートヒアアフター」なんかでも問題提起型の映像作家という気もしたから、これでいいのかもだけど、自分にはちょっと最終的には不完全燃焼ではあった。