「断崖」と「紳士協定」

ふや町映画タウンのオススメ作品のうちamazonプライムで観られるものを二本鑑賞。

一作目 ヒッチコックの「断崖」

タイトルから物理的ハラハラを想像してしまい観るのが遅くなった。物理的なものもあるが、心理的な追い詰められが楽しい作品。ジョーン・フォンテイン演じる知的美女がガードが固いと思われているがゆえに、芳しくない評判もあるケイリー・グラント演じるプレイボーイと恋に落ち結婚→そこからの~というストーリーだが、この設定もよくわかるし、ケイリー・グラントが見方によってどうにでも見える人物をうまく演じていてハラハラのしっぱなし。あっという間に終盤という鮮やかさ。コワさとおかしさがうまく混ざっている。

 

二作目 「紳士協定」

紳士協定(字幕版)

紳士協定(字幕版)

  • グレゴリーペック
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アメリカの反ユダヤ主義を記事にするためユダヤ人として生活しどういう対応をされるかという生活実験をするグレゴリー・ペック演じる主人公。「紳士協定」というのは不文律みたいな意味らしく、明文化されていないがそういう風になっている、というようなことらしい。そのことによってグレゴリー・ペックとその家族が味わう被差別の構造は、日本にもすごくあるし、外国の話として観た方が差別する側の言い訳を考えないで観られるからずっと理解しやすい。少し前にアトム・エゴヤン監督の「アララトの聖母」という作品を観、トルコによるアルメニア人の虐殺の歴史を知ったが、日本と近隣諸国との話と一緒、でも距離がある分構えずニュートラルに入ってくるという気持ちになったのを思い出す。

アララトの聖母 [DVD]

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  • デヴィッド・アルペイ
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日本で差別問題を考える時に浮かび上がる「差別されている側には素行の良くないものもいる」「自分は差別してるつもりはないが、差別を看過しているということは加担していることだ」というようなポイントが描かれている。ただグレゴリー・ペック演じる主人公が厳密過ぎて息が詰まりそうな気分にも。的を射ているからかな。

監督のエリア・カザンは移民という弱い立場故、こののち赤狩りの時に司法取引して一時共産党に入党していた時の情報を提供してしまったという経緯を知っていると、信念とそれの完遂の難しさというか、こういう映画を作ったあとそういう行動をせざるを得なくなるつらさというか、そんなものもひしひしと感じてしまった。