がめつい奴

CSで放映されなんとなく録画していた「がめつい奴」(1960)。監督が最近立て続けに観ている千葉泰樹と知り観てみる。

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釜ヶ崎の自称「ホテル」が舞台。(黒澤明の「どん底*1のような住環境。)生き馬の目を抜く人々の暮しっぷり。戦前その場所にあったお屋敷の下女中だった女(お鹿婆さん)とその家族がそこを占拠し宿賃を取って暮らしている。(昭和の「パラサイト」*2???)

菊田一夫脚本のこの作品は大ヒットしたらしく、吝嗇な主人公「お鹿婆さん」という名前は1960年代前半生まれの自分も幼少時から知っていた。(お年玉を使わず貯めこもうとしたらその名で呼ばれた。)

森雅之が下町風のとんでもない汚れ役を演じていて「悪い奴ほどよく眠る」*3でみた老け役以来の驚き。はじめ誰だかわからなかった。凄い。

若き高島忠夫がおしか婆さんの息子役だが軽妙でとってもいい。今まで観てきた高島さんの姿の中で特にいいと思う。

中山千夏の子役も堂に入っている。

森繁久彌が関東からやってきたお鹿婆さんの義弟、大阪生まれの森繫の関東弁がうさんくさくていい。

ちょっと出てくる警官役が加東大介だったり、とにかく役者ぞろいで濃くてエグい話をテンポよく楽しんでしまう。

 

観終わって、父が生前映画や演劇を録りためていた棚をみていると、渡辺美佐子のお鹿ばあさん、ラサール石井がその息子でサンシャイン劇場で演じられたNHKの舞台放送録画があった。1992年〜1998年にかけて蝉の会というところがサンシャイン劇場や地方公演を行っていたらしい。

こちらの方もみてみた。渡辺美佐子のお鹿ばあさんは、ちょっと愛嬌があるし、映画では具体的すぎてえぐいシーンも舞台で抽象化されみやすくなっているように思う。森繫がやっていた役を犬塚弘さんが演じているが洒脱でとてもいい。気になったのはお鹿ばあさんの息子の関西弁がもうひとつだったところだけ。映画版では草笛光子が演じていたお鹿ばあさんが占拠した土地のもともとの持ち主のお嬢さん、三田和代という人が演じているが、これがまた男性で人生を曲げさせられる感じがもうたくみで!一目でわかる彼女の境遇。感心してしまった。

蝉の会による「がめつい奴」について検索してもあまり情報が出てこないが、観て損はない忘れられてしまうのは惜しい代物であった。