先日来宮本武蔵やら佐々木小次郎やらの題材のものを何作か続けて鑑賞。
まずは「決定版」といわれているらしい錦之助ー内田吐夢監督バージョン。三作目まで感想を書いた*1が、四作目、五作目がまた楽しくパワフルで一気に観させる。
四作目「宮本武蔵 一条寺の決斗」
クライマックスシーンのモノクロのインパクト!あとから去年読んだ橋本治氏の「チャンバラ時代劇講座」を再読したら、そのことが取り上げられているのだけど、すっかり忘れて観たもので驚くやら興奮するやらだった。そしてここでの河原崎長一郎さんの存在感といったら!テレビドラマでよくされている気の弱い小市民のおじさんイメージからは程遠い迫力。素晴らしかった。
五作目「宮本武蔵 巌流島の決斗」
最後まで武蔵を息子の仇(って生きているのだが・・)と思い込む浪花千恵子さんは大活躍。コメディエンヌ的役割も。
内田吐夢版は一年一作のペースで発表されたらしいが、それぞれの回にゲスト的に活躍する豪華な出演者がいるのも楽しめる。
武蔵のこと地元一乗寺で決斗したということ以外は時代もなにも知らなかったのだが、関ヶ原の戦いのあとの話であったこと、本阿弥光悦とどうも同時代人であったらしいことなど描かれていて、大好きだった大河ドラマ「真田丸」のちょうど後の時代の話であったか、とか、鷹峯の光悦寺には、25年くらい前に行ったきりだけど、ただの名所として見学しただけで、今行ったらあの時とは違う味わい方ができるなあなどなど興味が広がった。
まずは昭和25年~26年版(大谷友右衛門という方が小次郎、武蔵が三船敏郎)。日本映画傑作全集では「佐々木小次郎」として一巻になっていたが、yahooムービーの情報をみると、三作品をまとめたもののよう。
このシリーズは内田吐夢版(=吉川英治原作「宮本武蔵」)とは趣向が違う話らしく、小次郎の色恋沙汰中心でたまげる。しっかりせい!といいたくなるほど。
嬉しかったのは
藤原釜足さんの活躍。小次郎に寄り添う飄々とした盗賊島兵衛役。
東野英治郎演じる敵役。お若い!そして面白い造形。
森繫さん演じるおしゃべりな通りすがり。生き生き。
琉球のお姫様役の高峰秀子様。メイクもいつもと違っているし、格闘シーンも良い。
曾呂利新左衛門(伴内という名になっていた)なども暗躍、堺の町ではオウムやら南蛮風の風俗も描かれている。
小次郎役の大谷友右衛門は
高橋一生みたいな系列でさわやかなんだけど、(内田吐夢版の健さんよりずっといい感じ)とにかく、ちゃらちゃらしているような人物像に描かれていて、タイトルは「佐々木小次郎」なのに武蔵の引き立て役のようにみえてしまう。
つづいて昭和42年版(現在の尾上菊五郎が小次郎、武蔵は仲代達也)。
こちらで小次郎を演じるのは現在の菊五郎。
昭和25年版で藤原釜足さんが演じて魅力的だった島兵衛は長門勇さん。
「三匹の侍」*2でその持ち味と、サモ・ハン・キンポーばりにふくよかなのにキレのある動きに意外な楽しさを感じた長門勇さん。今回も良い。島兵衛はいい役。
ストーリーはほぼ昭和25年版と同じ。はじまりはこちらの方が丁寧に思われたが、(ビデオの25年版は総集編だからというのもあるだろうな)沖縄のお姫さまとそれに付随するストーリーなんかはデコちゃん版の方がよかった。
そして、今回のマイ武蔵キャンペーンのラストに観たのが溝口健二版「宮本武蔵」。
溝口監督の武蔵ってどうなんだろうと思って観始めたが、画面の様式美など見どころあり。構図などがとてもキマっていて、さすがと思わされた。こちらは菊池寛原作。
河原崎長十郎の立ち回りはものすごくキマっていて、みていてすっとするし本当にかっこいい。田中絹代も可憐。ストーリーも村上元三原作の「佐々木小次郎」にくらべてずっと控えめロマンチシズムがあってそこがキュンとくる。
まだまだある宮本武蔵もの、もうちょっと観るつもり。