「スター伝説」、「ファイヤー・ドラゴン」

ふや町映画タウンのオーナーと香港映画も好きな常連さんの間では、香港映画の3代巨匠はジョニー・トー、ウエン・ユーピン、ジェフ・ラウということになっているらしい。私もジョニー・トーについてはこの秋ふや町映画タウンのおすすめ印のついている「ザ・ミッション」*1と「暗戦 デッドエンド」*2を観たのが香港映画に開眼するきっかけになったし、先述の常連さんもやはりその二本が決め手になったらしい。で、とりあえずおすすめ印に従って観てみるのがいいかなということで、ジェフ・ラウ監督の「スター伝説」(1993)とウエン・ユーピン監督の「ファイヤー・ドラゴン」(1994)を鑑賞。

ジェフ・ラウ監督は「バンパイア・コップ」*3というお盆に警察で吸血鬼騒ぎという昭和期に香港映画というと思い浮かべるような作品を先日観たところだったのだけど「スター伝説」は全く趣きが違った。

ビデオジャケット表紙から想像するようなちょっと素っ頓狂なような作品でなく、60年代のノスタルジックな風景が美しい、良質の台湾映画を観ているような風合い。そこに香港特有のドラマチックさが加味。香港映画を観ているとキュンとするロマンチックな表現がとてもうまく、なぜだろうと思うのだけど、女優男優ともに振り切っていてこっちはもう引っ張られるまま作品に没入できるからだろうか?とにかく、このお話も「ロミオとジュリエット」ばりの悲恋がなぜかオリジナルよりずっとまっすぐこっちの胸に響いてしまった。その物語を探る娘という設定もとてもよく、気持ちよくすっきり心に入ってくる物語。主人公のアンディ・ラウ、「暗戦」でストイックで切なくてクールなのに血の通う雰囲気で観ているものの気持ちをすっとつかんでくれたが、この映画でもやさぐれの純愛をうまく体現。魅力的だった。

「ファイヤー・ドラゴン」はユエン・ウーピン監督作品。ウォン・カーウァイの「恋する惑星」で金髪の麻薬の売人を演じていたブリジット・リンが主役。かっこいい涼しい顔!すごい身の動き。以前はワイヤーアクションを多用する作品のこと好きではなかったが、この作品では飛んできたーという感じがテンポよく面白く感じた。香港の女優さんのアクションからしっとりまでこなす感じ、いつも気持ちがいいし感嘆する。日本映画での女優の役割とだいぶ違う。本当新鮮で気持ちよい。

政界の陰謀の裏で活躍する忍者みたいな話だが、雑技団を絡ませてあるところが観ていて楽しいし面白いつくりに。真剣な闘いに端役の息抜き的な面白さをまぜて緩急つけるところ、文楽とも通じるものを感じた。ラストもべったりしていず、「シェーン」みたいな爽やかさ。