ジョニー・トー監督の特集上映会で「エレクション 黒社会」(2005)鑑賞。
長老たちのゆったり飲茶みたいな空気の端からの抗争シーンなどもとても良し。「アウトレイジ」(2010)*1なんかも、この辺の空気もらってきてるんじゃなかろうか?ユーモアと緊張。乾いた人間観察の面白さ。
香港映画、いつも本気度が凄いと感じるが、こちらもしょっぱなからかまされる。
衝撃を受けたのは「人は信じず組織を信じる」って風情のニック・チョン。後半にも見せ場があるが乱闘中液体をかぶって白塗りみたいな形相になりつつフラメンコのような足拍子的音とあいまりまるで歌舞伎!ぞくぞくした。ジョニー・トー監督、ストイックに話を進めておいての要所要所見せ場がありこの感じがたまらない。冗長さがまるでない。
「エレクション 黒社会」は二人の中堅ヤクザのトップ争いの話だが、冒頭「グッドフェローズ」のジョー・ペシのごとき振る舞いで感じが悪く尊大な風情のレオン・カーフェイ。これが、途中からなぜかとても気になる人物にみえてくる。そこから振り返ると、冒頭のシーンも強がってはいるが虚勢張ってる弱さも見え隠れしてたなあなどと思い起こさせる演技のさじ加減の面白さ。まだまだ香港映画入門状態なもので出演作を調べたら「黒薔薇vs黒薔薇」*2でかっこいいのにトンチンカンみたいな役を映画自体のめちゃくちゃぶりにすんなり調子をあわせ好演されていた俳優さんだった。
さらにレオン・カーフェイをちょっと追っかけたくなってすぐ観た「野獣たちの掟」(イー・トンシン監督 1987)
「狼たちの午後」*3や中島貞夫監督の「狂った野獣」*4などの名作人質ものを香港舞台で、という感じの作品だが、テンポが良くてとても面白い。全く退屈しなくずっと笑い続けた。
レオン・カーフェイはあまり出番がなかったが、上品で犯人に妙に信頼されてる捜査官役であり、「エレクション 黒社会」でのギラギラしてしかし哀感もあるヤクザっぷりとはすごい差。そこも楽しめた。
主役のティ・ロンってひとは「男たちの挽歌」で有名な人らしいが、未見。そろそろ観るべきか。
「野獣たちの掟」はふや町映画タウンにてレンタル。