敵、ある愛の物語

 

敵,ある愛の物語 [VHS]

敵,ある愛の物語 [VHS]

  • 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
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1989年ポール・マザースキー監督。

第二次世界大戦後収容所から出てきたユダヤ人の男。妻子が殺されたと思い、命を救ってくれたポーランド人の元使用人と結婚。。しながらも愛人のところに足繁く通っていたら元妻が生還してきた。。どうする?というストーリー。

ほんとどうしようもないんだけど、途中元妻アンジェリカ・ヒューストンに看破されてしまうようにどれも切り捨てられないうちにこういうことになる、「決められない人」で、こういうことってままあると思う。男女関係においてではないが、自分がまさにソレで、どう決着つけるのかと他人事ではない気持ちで見守った。

愛人役のレナ・オリンの持つ恋の楽しさ、元使用人だったポーランド人の妻の素朴な無邪気さ、それぞれに後ろ髪ひかれ、関係を切ることができない。元妻との間は収容所に連れていかれる前は子どもも二人いて順調で「戦友」ともいえるような間柄なのだと端々の空気でわからせる。感動作の体裁ではないが、ないからこそ、戦争の傷痕を日常レベルで感じさせてくれる。ユーモアさえ漂う自分や身近な隣人のスケッチとして。

ポール・マザースキー、遥か前に猫と暮らす老人のストーリー「ハリーとトント」を観たが、観る前に予想していたかわいらしいだけのものでなく、かなりペーソスの度合いも強く、寂しい気持ちになったことを思い出す。初老になった今みたらもっと身につまされそうでもありもっと共感しそうでもあり。

主人公の男、ダブルスタンダードだったりでひどいと思うこともあるんだけどこういうものだよな。ラストまで観てタイトルの意味がじんわり。にんまり。

この映画は淀川長治さんの「淀川長治のシネマトーク*1に「コニーアイランドが舞台の良質コメディ」と紹介されていて観てみたのだけど、コニー・アイランドの空気、それぞれの女との様々な空間での様子はリアルでもあり美しくもあり面白かった。退屈させずに観させる。