まっとうな人生

 

2007年にえらく楽しんだ精神病院から脱走する男女二人コンビ(非恋愛関係)の物語「逃亡くそたわけ」*1の続編。

その後それぞれ伴侶を得て、偶然出会い家族ぐるみでつきあったりする短い時間の話だけど、恋愛関係になったりせずそれぞれの家庭生活を軸にそこからブレずに話が進むのが心地よい。ちょうどコロナ禍の渦中が年月の表記とともに描かれ、あのときはこうだったと自分の生活ともピッタリと重ね合わせられる。こういうことの記録も大事だなあ。富山県が舞台のはなしだがとても事細かに描写されていて絲山さん住んでいるのか?と思うほど。

「逃亡くそたわけ」を読んでいたときは存じあげてなかったけれど双極性障害の当事者としての表現が日常の地繋がりに冷静に描くタッチであり、悲壮感がなく、そこにもほっとさせられる。

「逃亡くそたわけ」の時も挿画が良いなあと思ったら気になっていた阿部真理子さんという方が担当されていたのだけど、こちらも、また冒頭にある舞台になった富山県各地の挿画含め表紙もこの小説の感じを表していてとてもいいなと思ったら、いつもその絵を見るたびに惹かれる長崎訓子さん*2の作品だった。