新選組映画

池田屋事件がちょうど祇園祭の時に起きているもので、七月には新選組映画を観たくなる。

昭和14年 萩原遼監督の「その前夜」は、池田屋事件前後の京都をすぐそばに住む友禅染めの一家を軸に描いたものだが、さすが山中貞雄原案。秀逸なものだった。山田五十鈴高峰秀子の姉妹と家族。芸者役の山田五十鈴の舞のシーンそしてその後の展開の良さ。飲み屋での親父殿との酌み交わしとんでもなくいい味。いよいよ池田屋事件が起きるその時の高まりを祇園囃子に乗せて、「夏祭浪花鑑」、あるいは、「阿波の踊子」*1や「ええじゃないか」*2のような、文字通りのお祭り騒ぎの中何が起きるかわからないという緊張感がうまく表現されていて印象深かった。

 

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昭和12年の「新選組」は、鳥羽伏見終了後の時代、夕暮れから始まる新選組物語。大砲運ぶ苦労みたいな現場の声が描かれているのがさすが前進座作品。写真の印象から細くて冷たい美男子のイメージの土方を、熱くて骨太なイメージの中村翫右衛門が演じている。イメージとの相違にも関わらず、これがまた近藤への愛情とその見通しへの不安が垣間みれてとても良い。

沖田が関東に行ってすぐ寝かされる病院の西洋式のベッド、大工の話すホテルの建設話など今までにない切り口であの時代を感じることができた。

 

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そして、本日観たのが、草刈正雄の「沖田総司」(1974 出目昌伸監督)

これが期待よりずっと良かった。「かっちゃん」「歳三」と呼び合う近藤と土方、土方の家業「石田散薬」の話、そして主人公は草刈正雄三谷幸喜の大河が好きな人は楽しめるのではないだろうか。しょっぱなの食い詰めている感じ、思想性は後からついてくるようなところなどなどリアルで面白い。そして、こちらでも京都入りするなり友禅染が登場。美しく空を飾る。日焼けした肌に映える沖田の白い歯。かといって、彼らのことを無辜なるものとしてまつりあげるのでなく、ヒーロー性なし、陰惨な池田屋事件。組織が大きくなり問題を抱える新選組、そしていくさの仕方の変化などを内側からリアルに描いていてとても好感。総司の心象風景を描くかのような前衛がかった映像も楽しめた。米倉斉加年演じる近藤は米倉氏って美青年でもあるのねと思わすところもありこの映画の解釈の哀しむべき一面というのもうまく強調されており味わいがあった。土方を演じた高橋幸治もとてもハマっている。

良作多いものでもうちょっと新選組映画観ようかな・・という気持ちになっている。