花いちもんめ。

千秋実さんが認知症になった考古学の教授を演じ、1985年のブルーリボン賞やら日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞を受賞された作品。千秋さんは好きなのでいつか観ようとは思っていたけれど、当時のイメージでは千秋さんの認知症の演技が壮絶であるというような話ばかりでなんだか観るのがこわいという感じもあり観るまで時間がかかった。

wowow放映を機に思い切って観てみたら、まず千秋さんの仕事場が島根県の歴史資料館ということで、島根の歴史のはなしから始まり、また千秋さんの家のたたずまいがとても良い感じの古民家だったり、海岸の風景も美しく、山陰の好きな自分はぐっと惹きつけられた。ロケ地を調べていてやっと少し書いてあったのが下にリンクを貼った美しい海岸、小波浦。42ura.jp

十朱幸代氏演じる大阪に住む息子のお嫁さんが第二の主人公。はじめ夫の浮気起因の夫婦仲の悪さからふてくされケンケンしていてどうしたものかというスタートだった・・が、舅の病院での認知症認定の日、舅からの彼女の苦しみに対する、元気なうちにこれだけはいっておこうという気概に満ちたいたわりの言葉をきいて、お世話することを決意、そこからの二人の姿はきれいごとでないシーンも含め心穏やかな瞬間だ。認知症の講座などで、認知症の人の話を否定しないで受け入れること、というのが出てくるが、お世話をしてくれる嫁を妻と間違ってしまうシーンがあり、そこからのトラブルもシビアに描かれている。

題材が題材だけに厳しいシーンはもちろん織り込み済みで、公開当時もそっちばかり伝わってきたりしていたけれど、厳しいシーンのときには必ず心に残る美しいシーンもはさまれていて、介護を含め人生って一面的なものではないと感じさせられる。そしてそのことは介護を経験した自分も大いに頷く。

心に残ったのはお盆の行事か、田んぼの中を提灯を持って人々が歩く幻想的なシーンや、ドラマの展開的には修羅場の千秋さんが妻 加藤治子氏をおぶって歩くシーン。

伊藤俊也監督、「誘拐報道」の時も細やかな表現がとても素晴らしかったし、「もっと観たい!」と思ったのだが、東条英機を描いていろいろ話題になっていた「プライド」の監督さんだったか・・・機会があれば観てみて自分の目で確かめよう。