キッチン

よしもとばなな原作の「キッチン」森田芳光監督と、イム・ホー監督によって二度映画化されていて観比べた。

 

まずは後発のイム・ホー監督(1997年)の「Kitchen キッチン」

原作はずいぶん前に読んだのだけど、舞台が香港になり、かなりテイストが違う。どうやら「キッチン」の翌年1988年に発表された「満月 キッチン2」の内容もいれてあるらしい。

古い香港の建物や部屋の感じなどはとても美しく撮られているのだけどストーリー表現がさらっとしすぎてわかりにくい。中国の奥地めいたところのロケとか敢行しているようなのだけど、なにかバラバラに感じてしまう。

日々食事を作ってとることが大きな淵からの再生みたいな話なのだろうが、富田靖子と男優の恋愛に近い家族的絆とか恋愛に寄せてる感じがもうひとつでピンとこない。原作で覚えてるのは女装したお父さんのこと。こちらで演じた俳優さん(ロー・カーイン)はなかなかムードあり美しかった。

 

続いて森田芳光版 (1989)

先にエキセントリックな香港版を観ていたので、こちらは自然でなかなか良く感じる。

主人公の女の子はこちらのほうが白の似合う清冽な感じでずっといい。

ちょっと富田靖子のほうはエキセントリックな設定になりすぎていた。

女装している母は橋爪功。こちらがほんとにナチュラルでびっくり。調べると40代後半らしい。橋爪の息子役(松田ケイジ)、棒読みなんだが現実離れした、人生の苦いところはとりあえず眺めずにすむような、絵空事感もあるこの作品には似合っているようにも思えた。モデルからの抜擢だったらしい。それは80年代の空気でもあるのか、森田芳光のそういうところがしばし現実を忘れられ、好きだったりもした。

テーブルデザインとしてクニエダヤスエさんの名。懐かしい。本も持ってたなあ。

精神科医から俳優でないなにかを感じたら四谷シモンたった。

主人公のみかげが最初に住んでいた古い家の魅力。森田芳光作品は「の・ようなもの」の都電だとか、「ハル」の深津絵里の作る料理のおしながきとか古風なものの美しさを表現するのがうまいなとしばしば感じる。

函館のロケも魅力的。検索すると今はもうない景色も映っているようだ。