美空ひばり氏のことは生前ちょっと苦手で、興味のある映画でも「ひばりさん主演か・・」と後回しにしがちだった自分なんだけど、みたらみたでよくできていて楽しめる。ちょっとずつ脱感作方式で観ていこう。
今回観たのはいずれも川口松太郎氏原作×美空ひばり氏主演の二作品。
「女の花道」は1971年、「風流深川唄」は1960年と10年の開きがあり、「女の花道」の方はずいぶん若い小娘時代から演じているもののえらい風格が漂っている。時々ひばり氏が岡田茉莉子氏にみえる。かなり違うカテゴリーのお二人だと思うが・・「風流~」の方は割合可憐な感じで、鶴田浩二氏との恋愛話が自然にみえる。
両方に杉村春子氏が出演しているのだけど、「女の花道」の踊りのお師匠さんの威厳ある空気の凄いこと。ほれぼれした。ひばり演じる出雲の勧進巫女おきみを取り立てた時の、元からいる弟子たちの僻みを制する「ここに自分の弟子として存在する人間に才能のないものはいない、才能が熟する時間が違うだけだ」という意味の言葉、さすが芸道ものの川口松太郎氏原作だ。
勧進巫女という存在にも興味を持った。
田村高廣氏が超やさ男な歌舞伎の振付師。その姉のいけずな京都弁、堂に入っていた。
田村高廣が入りびたりになる芸妓さんに野川由美子氏。なかなかいい感じ。がんばりすぎる妻に対応しての配置、よいと思う。
美空ひばり芸能生活25周年記念映画ということで、彼女のための書き下ろし作品らしいが、確かにひばり氏の人生をほのめかすような筋書きになっている。沢島忠監督作品。1950年代終わりごろから1960年代初頭の沢島監督作品でかわいらしく大活躍*1の中村嘉葎雄氏が、ちょっと落ち着いた雰囲気で登場。
「風流深川唄」は山村聰氏の監督作品で、出演も。深川のお祭りの描写が古の屋台のだしものなど生き生きしていてとても楽しいし、料亭を商うひばりのおとっつあんの粋筋の彼女、山田五十鈴氏もとても魅力的。深川ってこういう空気なんだろうなと伝わってくる。宮口精二氏が鶴田浩二氏の兄貴分的な板前なのだが、これがまた苦労を知っているいぶし銀な感じでとてもいい。宮口氏、ホワイトカラー役も職人役も現場の刑事役も・・何を演じてもサマになるなあ。
メインの話はひばり、鶴田浩二氏の悲恋ものみたいな話でまあそれはどちらでもよい感じだったかな・・鶴田氏もちょい苦手なもので・・
*1:「暴れん坊兄弟」(1960)や「殿さま弥次喜多」シリーズなど 「殿さま弥次喜多捕物道中」(1959)の「殿さま弥次喜多」(1960)