太陽の王子 ホルスの大冒険

太陽の王子 ホルスの大冒険 [DVD]

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高畑勲演出のこの映画に出てくるヒルダという女性のキャラクターのキャラクターデザインの担当は、東京国立近代美術館で催されている高畑勲展に出かけられた友人かなさんによると、森康二さんであるとのこと。かなさんが記憶されていたのは、

ヒルダの造形が非常に難しく、何人ものクリエーターが案を出したという話が印象的だったから。その中には宮崎駿もいました。が、高畑さんが採用したのは森デザインのヒルダ。展示で複数のヒルダ案を見ましたが、どこか陰のある含みを持たせた少女を一番体現していました。宮崎駿はそのヒルダを見て驚愕した、とイアホンガイドの説明もありました。

とのことを、このブログのコメント欄に残していただいて、早速この作品を拝見した。森さんの作品は「わんぱく王子の大蛇退治*1の造形でひきつけられ、「こねこのらくがき もりやすじの世界」*2というかわいらしい作品集でなじんでおり、「こねこのらくがき」などとてもかわいらしい印象なので陰のあるキャラクターというのも興味があった。
ヒルダ、引き裂かれた自己の哀しみをまとう本当に重要なキャラクターで、ヒルダの登場でぐんとこの作品の緊張も高まる。この作画によってずいぶん映画全体の印象がかわってきたと思う。
自己分裂的葛藤は、ヒルダだけでなく、物語全体を覆っている。信じたい心と疑う心。登場するキャラクターのそんな複雑さが物語をとてもおもしろくしており、多くの人に愛されてきたのがわかる作品だった。観るきっかけを作ってもらって本当に感謝。
途中、セル画の枚数を節約して静止画で表現しているところがある。(「止め絵」というらしい。)wikipedeiaによると、凝りすぎて製作が遅れ、予算調整の会社との折衝の中で約束させられたことのようだ。この作品は68年公開だが、「止め絵」の技法、60年代後半のテレビアニメで、乱闘シーンなどでよくみかけたような気がする。
ヒーローが一人で戦うのでなく、全員で戦う理念、キャッチコピーにも謳われているかわいい動物の登場・・とても心憎くすばらしい。
ヒルダの服装などからアイヌのおはなしかなと思ったら、前掲wikipediaによるとやはり、アイヌの伝承をもとにしたた深沢一夫の戯曲(人形劇)『チキサニの太陽』を基とした作品であるという。

東映側はアイヌを題材にした『コタンの口笛』等の興行実績から難色を示し、舞台を北欧とすることで了承した

ということも載っている。そうだったのか・・