紀の川

 

あの頃映画 「紀ノ川」 [DVD]

あの頃映画 「紀ノ川」 [DVD]

 

 ストーリー自体はとてもパワーのある作品だと思う。映画としてできあがった時の表現がちょっと一本調子に感じてしまった部分もあるが、日露戦争のあたりから戦後まで紀の川のそばの大地主の家に嫁いできた女性の一代記はなかなかおもしろい。

旧家の中で生きている人々の暮らし、先日もNHKスペシャルで「京都百味会~知られざる”奥座敷”の世界」をみて、息の詰まる思いをしたのだけど、

www6.nhk.or.jp

この映画でも司洋子扮する主人公花のきちんとした姿に、焦りを覚える。

冒頭司洋子が舟で嫁いでくるシーンがあるのだけど、その粛々としたさま、実はもう娘を送り出す立場にありながら、当日の自分の装いのことやらなにやら全くど素人の自分に冷やっとした。

ことあるごとに映る家紋・・そこで生活している人にとっては誇りでありプレッシャーであろうなとつくづく感じた。

祖母役の東山千栄子の本当落ち着いていたこと。明治生まれの祖母のことも思い出した。映画の中では司洋子が注意するのだったかと思うけれど、話すときは座って、と相手が興奮していても諭す雰囲気・・私も祖母からそういう風にしつけられ、普段は優しかったが、あの「格」みたいなものがなぜだか息苦しかった。話をする前に座れといわれただけで高まる緊張。しかし、東山千栄子や、自分の祖母みたいに年齢がいくと、ある程度マイルドにそれを熟させることができているようにも思うが、娘が思春期くらいの女主人(つまり司洋子)の立場ってまだ枯れていなくなかなか厳しいなとも思う。

ロシアからの帰国者である東山千栄子日露戦争の時「ドストエフスキートルストイを生んだ国と戦争するなんて」とつぶやくのも趣深かった。

母である司洋子と長女岩下志麻の、対立しつつも、どんどん変化していく関係が描かれているが、以前読んだ「香華」なども母子の対立と共存がテーマだったなと思い出す。

ロケ地なども気になっていたらきちんとまとめてあるページに行き当たった。

wakayama-rekishi100.jp

 

こちらにも有吉さんの政治家だった祖父がモデルになっている部分があると書かれていたが、やはり作中でも孫娘が父親のバタビア赴任につきあった話など出てきて、有吉さんもバタビア育ちであったなあと関連を感じた。