山田太一劇場

日本映画チャンネルでの山田太一劇場に夢中になっている。今月は笠智衆さんのシリーズでほんと毎週楽しみにしている。

録画しておいたのを昨日見た「今朝の秋」。

今朝の秋 [DVD]

今朝の秋 [DVD]

杉浦直樹が演じる息子が余命いくばくもなくなって蓼科から出てくる笠さん。杉浦直樹の年齢が自分と同じ年齢設定であることにも改めて慄然とする。ともあれ、みまいに行くときの白いスーツ姿がすてき。別れた妻役の杉村春子の和装も。ある年代以上の人のちゃんとしたところに着ていく意識のあらわれのような装いに惹かれる。場への敬意のあらわれという感じがして。昔はそういうのが苦手だったのに。
なにか形をかえた「東京物語」のようなこのドラマ、杉村さんはここでも本音の部分担当というか、男親のロマンを実行できない自分へのいら立ちの表現がうまい。
早春スケッチブック
早春スケッチブック DVD-BOX

早春スケッチブック DVD-BOX

でもかっこいいことばかりいっている山崎努を批判する(やみくもな批判でなく、それもいいなとどこかでは思いながらそうできないつらさを表現しているかのような)岩下志麻がよかった。
またいつも思うのは山田太一のリアリティと夢の部分のとりあわせかたのうまさ。それは杉村さんや岩下さんが役の上で代表してくれている日常の世界とロマンの世界の対比、融合そのもので。

杉村さんともだったけれど、古き名優とのやりとりがとても良い。

「ながらえば」

ながらえば [DVD]

ながらえば [DVD]

での宇野重吉さんとの、病気の妻を抱えての夜更けの語り合い

「冬構え」

冬構え [DVD]

冬構え [DVD]

での沢村貞子小沢栄太郎藤原釜足それぞれの老境。
人生の先輩として胸に沁みる。「今朝の秋」での加藤嘉とのシーンもよかったなあ・・

先月放映していた緒方拳主演の「タクシー・サンバ」も人間を信じる心のようなものを安っぽくなく骨太に描いていて日々の支えになるような作品だった。辰巳柳太郎さんの社長もいいし、ベテランドライバーの花沢徳衛さん、中間管理職の佐野浅夫さん、もうそれぞれよい味。