関川夏央さん

本日の週刊ブックレビューでの関川さんの話おもしろい。佐藤正午の「5」という恋愛小説を漱石のパロディーだと。読んでないけれどその視点が好き。ちょっと前も関川さんの「女優男優」という本を読んで、男優の部分は男優さんにあった洋服を着てもらいながらのインタビューという、へたしたら個性のない提灯記事になってしまいそうな種類の仕事を遠慮してたらちょっと書けないような鋭い洞察でもって仕上げていてもっと関川さんの仕事に触れたい、と思っていたところだった。女優の部分も、調べもしっかりしている上に、そんな切り口があったんだと教えられることの連続で。以前関川さんが週刊ブックレビューですすめておられた「日本文学盛衰史」も楽しめたし、その流れで読んだ「ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ」も堪能した。

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女優男優

女優男優

薄っぺらい映画っていう感想をもっていたものにも違う視点を与えられたり、実に得るところの多い本。それは具体的にいうと、日活が男性スターのローテーションを軸にしている会社だから戦後の新しい女性像として望ましいとイメージされた特質は、女優たちに分担してになわされ、女優たちが記号化された、というような話。吉永小百合に与えられた記号は「かわいい男まさり」というのを読んで、「光る海」をみたときのなんだか薄っぺら?見たいな気分に決着がついた。
光る海 [VHS]

光る海 [VHS]


日本文学盛衰史 (講談社文庫)

日本文学盛衰史 (講談社文庫)

現代の日本に明治の作家がいたらこんなことするのではという仕組みがすごくおもしろく、でもそれはただのおもしろおかしいタイムマシンものという感じでなく、その人物の魂のありかたがわかりやすい形で書いてあるという感じ。。わかりやすい。。といっても全部理解できたとはいいがたい。わかる部分だけ理解したという感じだけど、楽しく明治の文学者をもっと身近に感じられるようになった本。

ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ

ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ

宮沢賢治のいろいろな物語を高橋源一郎が大胆におきかえて現代の物語にしているもの。ああなるほど、あのおはなしはこういうあやうさをたたえたものだったのか、と目からうろこが落ちるものも多かった。宮沢賢治のものをよんだ時の不可解な気分がそのまま残る、あるいはさらに複雑化するストーリーもあったけれど、それぞれのおはなしの世界がなんだかとってもシャープで、読んでいる間中物語世界にいきっきりという、読む愉しみを十分に味わえた本。