姫君

山田さんの本は自分が20代前半の頃のデビュー作近くのものはたくさん読んだのだけど、勝手に恋愛現役中の人が読むもの、という感じで自分が結婚したりこどもが生まれたあたりから遠ざかっていた。今回久しぶりに友人にすすめられこの「姫君」を読んだがテーマは「死」だとか「人生」だとか、もちろん恋愛もそのひとつの手がかりとして描かれているけれど、年がいっても、いや年がいってこそ味わえる作品となっていた。恋愛に盲目になっている状態でなく、常にその状態を観察している視線を感じるし、だからといって荒涼としているわけでなく、「人生狂わせる人間は稀少価値」なんていい言葉がでてきたり、山田さんの眼力はやはりしっかりしているし、信用できるなぁと思った。いくつか短編がはいっているのだけど、表題作の「姫君」は出てくる人物が本当に魅力的で小説の楽しさを味わわせてくれるものだった。

姫君

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