活弁つき無声映画 4本

活弁つきの無声映画を4本鑑賞。

まずは「雄呂血」。

 

 

雄呂血(活弁入り)

雄呂血(活弁入り)

  • 発売日: 2020/12/25
  • メディア: Prime Video
 

 

橋本治さんの「完本 チャンバラ時代劇講座」に主人公が不自然なほど無防備に抗弁することなく転落していくのは、彼が言い分を主張したりするところの台詞を足していたら、テンポが悪くなってしまうからである、と書いてあってその予備知識があったからそういうものだと思って観ていた。確かに、とにかく最後の長い立ち回りの見せ場に向けて駆け抜けていく映画であると感じた。バンツマさんやスタッフの体力。若きバンツマさんの美しさ。自分は戦後のバンツマさんの顔がまず頭に浮かぶもので、無声映画時代はこんな美剣士であったかとそこも発見だった。

映画「カツベン」で、二川監督も登場し、「雄呂血」の最後の部分が使われているのだけど、一応「カツベン」は、「雄呂血」製作前夜物語ということかな・・そう思ってみると「雄呂血」に出てくる女優さんは黒島結菜的なものもあるなと感じたり・・

 

もう一本はこれまた二川文太郎監督、バンツマさんコンビの「江戸怪賊伝 影法師」。

 

江戸怪賊伝 影法師 [VHS]

江戸怪賊伝 影法師 [VHS]

  • 発売日: 1991/05/24
  • メディア: VHS
 

 みたのは、プラネット映画資料図書館が制作・発売、岩波映像販売株式会社の販売による「幻の活動大写真」の1巻で。弁士 浜星波。こちらも「雄呂血」と同じ1925年の作品。影法師という義賊の物語に恋愛ものがまぜてある。弱い人がやられている時にさっと現れる影法師はかっこいいが、悪い奴から金を巻き上げ、ばらまいて感謝されているところは、「自分の金でやれ!」という気持ちにも少々なる。(そういうツッコミのないシンプルな映画なのでつい観ているものがツッコんでしまう。)

 

三作目は「渋川伴五郎」

 

渋川伴五郎 [VHS]

渋川伴五郎 [VHS]

  • 発売日: 1991/05/24
  • メディア: VHS
 

 日本映画黎明期の歴史で必ず名前のあがる「目玉の松っちゃん」主演。澤登翠さんの活弁で。父との相克、父の敵討ち、妖怪退治とえらく盛りだくさんな作品。松っちゃんは、バンツマさんやアラカンさんの若いころのような美剣士系ではない。妖怪やその巣窟の様子などは「クレクレタコラ」みたいな手作り感あふれほほえましい。

 

四作目は「百萬両秘聞」。

 

百萬両秘聞 第一編 [DVD]

百萬両秘聞 第一編 [DVD]

  • 発売日: 2009/07/15
  • メディア: DVD
 

 

 

百萬両秘聞 第二編 [DVD]

百萬両秘聞 第二編 [DVD]

  • 発売日: 2009/07/15
  • メディア: DVD
 

 

日本映画の父 牧野省三監督、アラカンさんが嵐長三郎名義で主演。アラカンさんがとにかく美男美男と呼ばれ続けるのがファンとしてとても嬉しい。トレジャーハンティングものだが、由井正雪が悪政の幕府を倒すために集めたお金ということになっていて、アラカンさんは正義の人。よく似合っている。

からんでくる悪女役の鈴木澄子さんはビデオ*1監修の佐藤忠男さんによると、「ヴァンプ女優として一世を風靡したスターで、のちに化猫ものなどの怪談映画の、美人の口が大きく裂けてあっと怖がらせるような役でまた評判を得た。」とのこと。

 

以上「雄呂血」以外の3本はふや町映画タウンのVHSにて視聴。

*1:観たのはマツダ映画社から出ていた「アポロン活動大寫眞」VHS

巴里の評判娘

 

巴里の評判娘 [VHS]

巴里の評判娘 [VHS]

  • 発売日: 1989/06/20
  • メディア: VHS
 

愉快で面白くお正月を飾るのにふさわしい気分になる映画だった。

主人公をつとめるダニエル・ダリュー、超オールドファンの大正生まれの老父によると、出はじめの頃は「白痴美」などという不名誉な言われ方をされていたこともあるそうだが、その後めきめき本物の演技力を身につけていかれた印象とのこと。「ロシュフォールの恋人たち*1の姉妹のお母さん役、貫禄あったな。この映画ではもういきなりの下着姿などの体当たり演技で、確かにこの美女がこんなことをという驚きはあり、ひょっとするとその不名誉時代ということかもしれないが、役者根性が曲解されていたのでは?ちょっとマリリン・モンローの扱いとかも思い出したり・・手品のシーンなんかも達者でかわいらしいことこの上ない。この映画自体が、安くみられる美女の物語だからぴったりの脚本かもしれない。

とにかく、ふや町映画タウンのおすすめに入っていて巡り合うことができて良かった。ダニエル・ダリューの出演作もっと観たくなった。

間諜X27

 

間諜X27 [DVD]

間諜X27 [DVD]

  • 発売日: 2007/10/25
  • メディア: DVD
 

 ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督とマレーネ・ディートリッヒのコンビの第三作目とのこと。(1931年)

ディートリッヒの映画、「情婦」*1や「ニュールンベルグ裁判*2など50年代終わりから60年代初めの映画を先にみていたもので、まず貫禄を感じていたが、スタートはこういう感じだったのだな。もちろんこの映画でもすごい迫力である。でも、男性将校への近づき方とか手練手管がナチュラルで見ものであった。

ストーリーは、任務か恋かみたいな展開でちょっともったいない感じもしたが、あれでよかったんだな。正しさだけの人生なんてという耽美を凝った美しい映像とともに届ける映画なんだから。

華麗なるヒコーキ野郎

 

華麗なるヒコーキ野郎 [DVD]

華麗なるヒコーキ野郎 [DVD]

  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: DVD
 

 頭の中で「素晴らしきヒコーキ野郎」と混同。「素晴らしき~」の方も観ていなかったけれど、「ヒコーキ」なんて調子の良い、広川太一郎のナレーションみたいな訳語に能天気系の映画を想像していたら、予想とかなり違い70年代っぽい苦みのある真摯な映画だった。スタートは香具師っぽい飛行機の遊覧旅行のパイロットのレッドフォード。音楽もあいまって旧き良きアメリカ時代の元気な香りでスタート。(第一次世界大戦後の1920年代が舞台)レッドフォードの華が魅せる。スーザン・サランドンが「イットガール」風の役で登場。ある時から落ち着かれた役されているけれど、以前の映画観ると割合こういう役多いな。かわいらしい。

飛行機にとりつかれた人たちの上手な生き方なんかとは無縁の姿が熱いが潔く描かれていてまとめ方もとてもさわやかである。作られた時代の空気も感じる。良いアメリカ映画をみたな、という気分。

悪い奴ほどよく眠る

 

悪い奴ほどよく眠る

悪い奴ほどよく眠る

  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: Prime Video
 

まず驚いたのは上の写真右側の森雅之の老け姿。森雅之が出ているはずだがどこだろうとずっと探してしまった。いつもの感じとはまるで違っていて、でも優し気でいて油断できない感じはいつも通りぴったりだった。

 そして左側の三船敏郎。心に決意を秘めた秘書役。テーマを口笛で吹きながら着々とことを進めているところかっこいい。そして相棒の加藤武が、金田一シリーズみたいな抜けた役でなく、正統派な友人ポジションでこれも渋い。

冒頭の結婚式のシーンで、新聞記者たちがわんさと押しかけているのに違和感を感じたが、よく考えたら、昭和の披露宴ってテレビで放映されたり派手なことあったなあ。記者の中で特に目立っているのが、三井弘次。この方は、小津安二郎の「浮草物語」で前途のある青年、同監督の戦後のリメイク「浮草」で、どうしようもない旅芸人を演じていたもので印象深く、もうすっかり覚えた。この映画でも皮肉屋の新聞記者がぴったりだった。

志村喬がずるい上司役で出ているが、いやな役はいやな役でうまい。最近注目の西村晃はその下のかなりかっこ悪い役。(熱演)。さらにその部下の和田というのがとても味があると思ったら藤原釜足氏であった。藤原氏は庶民感覚溢れるおびえたような眼とかうまいなあ。そして、なかなか見せどころのある役であった。検事が宮口精二笠智衆、弁護士に中村伸郎と超豪華。それだけでもわくわくする。

テーマは今日的でもある不正ととかげのしっぽ切り。「巌窟王」が下敷きになっているようだが、私は「ロミオとジュリエット」も思い浮かべてしまったが、甘い感想なのかも・・

喜劇 初詣列車

 

喜劇初詣列車

喜劇初詣列車

  • 発売日: 2018/07/01
  • メディア: Prime Video
 

 渥美清国鉄もの。「喜劇 急行列車」*1「喜劇 団体列車」*2に続く三作目のようだが、他の二作品に比べ鉄道員としての色彩が薄かった。新宿のフーテン族の描写がかなり出てくる。昭和43年というのはそういう時代なのかな・・小松政夫さんがフーテン青年、渥美清氏がたまり場に潜入・・というようなストーリー。

最近大注目している西村晃氏が、渥美氏の上司で渥美氏に巻き込まれてのコミカル演技は嬉しい。

あと渥美氏の妻役、中村玉緒氏がとても可愛い。

ただ渥美氏のおもしろさでいうとこの映画は定型的なギャグでまとめているようで、「喜劇 女は度胸」*3などの方が思い切りよく大笑いしたな。

新婚道中記

 

新婚道中記 (字幕版)

新婚道中記 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 1937年アカデミー賞6部門ノミネート。監督賞受賞作品。

自分がみてきたケーリー・グラントの作品の中で若い部類のもので(といっても33歳のようだが)そこがなかなかよく、ラブコメの主人公にふさわしい魅力を感じた。3年後の「フィラデルフィア物語*1もちょっと連想したのだけど、別れた(る)体裁になっている男女の気になり具合が微笑ましい、というような作品。夫婦で飼っていた犬がみせる名演技。「影なき男」*2にも出ていたSkippyという有名な犬らしい。

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