暖春、青春放課後

 映画「暖春」をみていたら、2013年に掘り出されたという1963年の小津安二郎脚本のドラマ「青春放課後」とそっくり。調べてみたら「青春放課後」のあと、映画化されたものらしかった。

「暖春」の方は、最後主人公の女性が結婚するところまで描いていたが、「青春放課後」の方は、その前の登場するおじさん二人の酒場でのつぶやきで終わっていて、おじさんたちも主人公同様に青春放課後(の深い時間)を過ごしているんだよというようなしめくくり方、おじさんが主人公という感じもあった。(「青春放課後」では小林千登勢が演じた主人公を「暖春」では岩下志麻。華やかにはなっているが、「青春~」は「青春~」で控え目にまとまっていてよいような気がする。)

二つの出来をみていて、私は「青春放課後」に軍配をあげるかな・・「暖春」で付け足された結婚のシーンも森光子演じる母親は盛大に泣かせるのでなくそこは抑えてもよかったのではないかな・・また主人公の父親に関する説明もすっきりするといえばすっきりするけれど説明ないのも粋かなという感じでもあった。

「暖春」の方で京大出身のおじさまたちが「紅萌ゆる丘の花」という旧制三高の寮歌を歌うのはほんとに京大周辺で聞き慣れていたのでとても嬉しくなった。

あと「暖春」のほうは、「青春〜」の方で一人の東京の友人が二人になっていて、追加されている倍賞千恵子が蓮っ葉系で珍しい感じがした。


 wikipedia青春放課後

暖春 [VHS]

暖春 [VHS]

  • 発売日: 1984/05/19
  • メディア: VHS
 

 

かげろう侍

 

かげろう侍 [DVD]

かげろう侍 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 角川映画
  • 発売日: 2010/10/22
  • メディア: DVD
 

みたのはvhs版

これは「影なき男」*1の系譜の映画だな。コンビロマンチック探偵もの。中村玉緒の若い時、ほんとにチャーミングでかわいい。家族に愛されて育った人ではないかなと思ったりする。

ラストの断崖のシーン、ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」の影響を受けているとかいう話を読んだ。(はずかしながら未見)名作、まず最優先で観ときたい気分になる。

オセロ

 

オセロ / シェイクスピア名作映画集 CCP-298 [DVD]

オセロ / シェイクスピア名作映画集 CCP-298 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 株式会社コスミック出版
  • 発売日: 2012/03/05
  • メディア: DVD
 

がっつりした名作が観たくなって鑑賞。90分強でダルくもならないし、光と影の使い方、画面の凝り方も美しい。そして、何よりの人間ドラマ。オセロの妻デズデモーナを演じたシュザンヌ・クルーティエという女優さんが清らかで美しく話に入り込める。名前だけきいたことのあった登場人物やストーリーをちゃんと知れる喜び。時の荒波を何回も超えてきた古典のセリフの汎用的な力。結局コンプレックスが人を滅ぼす。

1952年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。

 

2020/2/10

以前設置していた掲示板の過去ログを整理していたら

2005/4/12に友人windshipさんが「オセロ」をご覧になった時の感想が出てきた。転載。

 

今朝はオーソンウェルズの「オセロ」見ました。
これすっごくよかったです。
黒と白の画面は美しい陰影をつくり
スピード感を盛り立て、静寂を深め、心を映し出していました。
オセロ、デズデモーナ、イアーゴ。。。
舞台劇(って言っていいのでしょうか)の映画化ですが
せりふはくずさず(らしいです)
とても映画らしい映画として再現されていました。

そして、われらが(いれてね)マーティン・スコッセシをして
「映画史上、ウェルズほど多くの人に映画監督になりたいと思わせた人物はいない。」
と言わしめたそうですね。
その言葉の意味の一端がわかる作品でした!

 

 

 

ラ・ラ・ランド

 

ラ・ラ・ランド(字幕版)

ラ・ラ・ランド(字幕版)

  • 発売日: 2017/08/02
  • メディア: Prime Video
 

 

遅ればせながらの鑑賞。

旧作映画へのオマージュがあるときいていたけど一番はじめにくっきり感じたのは「シェルブールの雨傘」。気になって検索したら、踊りの振り付けなど沢山の名作から引用されているようだ。

ラストは賛否あるみたいだけど私はこれで良い、こうだからこそと思った。

主人公ミア役のエマ・ストーン、顔も雰囲気も好み。そして、男性の主人公セブを演じたライアン・ゴズリングという役者さん、なんとも魅力あった。セブの持っているこだわりがよく分かる。

劇中名前が出てくるのが「理由なき反抗」と

カサブランカ」。両方、ここで撮影されたという流れで出てくるのだが、うまく物語の中にこれらの映画が生かされていると思うし、そもそもの筋立てに映画愛やら素晴らしいと思うものに情熱を持つことの偉大さが滲んでいて好ましい映画だったなあと後からじんわりと染み込む。

 

苦役列車

 

苦役列車

苦役列車

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

大河ドラマ「いだてん」で、志ん生の若い時を演じていた森山未來。途中も一度志ん生の息子たちを演じていたことがあり、演じ分けがうまいという声をきいたが、最終回で志ん朝を演じた時、自分の知っている志ん朝の感じだなあととても思った。(他の方については自分は知らないので比較のしようがなかった。)ということで、彼の出ていた映画「苦役列車」を観てみた。

原作*1の持つ古風な雰囲気が好きなんだけど、その言い回しはうまく生かされていた。ほんとこの主人公どうしようもないんだけど、一人称が「僕」だったり文体が品がいいので楽しめるところがあって。。ただ映画では映画をみる若い人への視野からか、青春ものの色彩が強くなっていた。わたしが持った印象よりちょっとかわいらしく現代風に仕上げてあるところがあるような。。もっとぼそっと最低なんだけどおもしろくて読んでしまうような風合いなんだけどな。あと、主人公の最低ぶり、映像でみるより本で読んだ方が、自分なりの調整がきいてきつすぎないというのもあって、小説のほうがかなりいいなとは思った。

高良健吾が日雇い仕事で知り合う同世代の友人みたいな感じだけど、以前みた「横道世之介*2に続いて人の良い若者を好演。(作られたのはこちらが先。)シュッとしたイメージを持っていたが、柔らかい雰囲気を出せる人なんだなあ。

二人とからませてある前田敦子も良い。朝ドラ「スカーレット」などで大島優子の実力も感じることが多いがAKBもなかなかやるなあ!(って今更な感じかな。。)

天使のはらわた 名美

 

天使のはらわた 名美

天使のはらわた 名美

  • 発売日: 2019/09/01
  • メディア: Prime Video
 

冒頭昔高田馬場駅前にあったちょっとエロティックな感じの回る人形が出てくるとどこかで読んでみてみた。たしかに登場。東京に住んでいた時はあの人形が気になって気になって仕方なかった。

f:id:ponyman:20191215005337j:plainこちら。しかし頭の中で少し変形している気もする。

主人公名美は強姦被害者を追っかけ回す女性雑誌記者。今の感覚でみると酷すぎるしいい加減にしろ、というところ。

この「天使のはらわた」シリーズは名美と村木という男女がさまざまなシチュエーションで出てきて毎回別人物なんだが(wikipediaによると、シリーズ第一作「女高生 天使のはらわた」*1のみ男の方の名前が川島らしい)この映画では村木を地井武男氏が演じていてこれがなかなかいい男で魅力的だった。ラスト、劇画からもらってきたような夕焼け色の背景のもと、物語が爆発するようになるところはなかなか良かった。

「天使のはらわた」シリーズ、雨のシーン、ウェット、みたいなイメージがあるんだけど、今まで観てきた中で蟹江敬三さんの「天使のはらわた 赤い教室」*2が私は好印象かな・・

息子

 

あの頃映画 「息子」 [DVD]

あの頃映画 「息子」 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: DVD
 

山田洋二監督のこの作品、若い頃は避けて通っていたような類の映画だが、好きな岩手か出てくるとのことでみてみた。

まさに三國連太郎版「東京物語」。風貌からいうと「東京物語」へのオマージュといわれている、マストロヤンニがこどもに会いに行く父親役の「みんな元気」の方が近いかもしれない。「東京物語」、今まで子どもの立場でみていて立派すぎる原節子に圧倒されたりもしていたが、今回は完全に父親側でこのおはなしを味わった。三國連太郎の気持ちがわかる。無理しているわけでなく、自分のペースで暮らしたい、時間は容赦なく前にしか進まなく、忙しかった子どもの小さかった頃が今では夢のよう。。という。三國連太郎永瀬正敏の家でちょっとウキウキするあの感じもよかったなあ。

永瀬正敏の職場のぐちっぽい田中邦衛がすごいアクセントになっていてとても面白い。

あと、三國さんが東京に行くきっかけが戦友会で、カラオケで軍歌を歌ったりするのだけど、この映画は91年だけど、まだこの頃はカラオケで軍歌ってメジャーで年のいった人は歌ったりしていたな、最近のカラオケは知らないけれど、今や戦後世代が70歳代で時代は変わっているよなと思ったりもした。

永瀬正敏のできのいい兄の家の描写も自分の中の限界を見せられたようでちょっとドキッとした。