イカレたロミオに泣き虫ジュリエット

 

イカれたロミオに泣き虫ジュリエット [VHS]

イカれたロミオに泣き虫ジュリエット [VHS]

  • 発売日: 1993/07/01
  • メディア: VHS
 

 ベルリンの小さなアパートで暮らしているお互いをロミオとジュリエットと呼び合う若き二人、ロメオとユリアの物語。二人ともストリートミュージシャンで出張演奏などでなんとか生活している。ユリアは10代後半らしい。もともと「ロミオとジュリエット」ってティーンエイジャーの話だもんな・・80年代のモノクロのせいか「ストレンジャー・ザン・パラダイス」のドイツの従兄弟みたいな感覚でこの映画を鑑賞した。「ラン・ローラ・ラン」や「ノッキング・オン・ヘブンズドア」等ドイツの映画でよく味わう甘ったるくないけれどえらく魅力的、という空気もすごく感じる。

ある事件に巻き込まれて、という話だけど事件の真相はスタイリッシュで簡潔な説明ゆえこういうことかな、程度にしかわからない。だけど、若い二人の様子、団子っ鼻のジュリエットと短足のロミオの自分たちでやっていくしかないじゃないかという感じがなんだかとてもほほえましく、愛すべき力があった。

ロメオの両親(多分50代)の出てくるシーンも、もう親近感でえらく楽しかった。「ロミオとジュリエット」の要素はロメオが演劇志望でセリフをいうシーンから二人がロミオとジュリエットとお互いに呼ぶようになる、ただそれだけなんだけど、そこなんかも古典台詞の神々しさも感じられたり、不思議な魅力を感じる映画だった。

 

黒い河

 

あの頃映画松竹DVDコレクション 黒い河

あの頃映画松竹DVDコレクション 黒い河

  • 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
  • 発売日: 2016/11/02
  • メディア: DVD
 

 みたのはvhs版

先日有馬稲子さんもお気に入りの作品とのこと。

https://eiga.com/news/20180628/16/


確かに有馬稲子さんはいい役ではあった。(仲代達矢渡辺文雄が有馬さんめぐって牽制しあう。)中心のストーリーはそれで、それは申し訳ないけれど、どっちでもいい感じだったけれど米軍基地のそばで利権がらみの暗躍みたいなのが日常的に行われている世界の描写は生き生きしていたし、戦後すぐってきっとこういうこと誇張でもなんでもなくあったことなのだろうなと思ったりもした。舞台は基地近くのボロアパート(と書くと、のんびり素敵な雰囲気が流れてしまうが、この映画は世知辛さが前面に出た世界)で、大家の山田五十鈴が、つけ歯でもしているのか、俗悪なざあます夫人になりきり(歯の印象で誰かわからなかった。)住民の団結をうながす金さんという人物が宮口精二。宮口さんらしく、地味で熱い、多分在日韓国人をとてもうまく演じておられた。

影なき男

 

影なき男 [DVD]

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 みたのはVHS版。

ふや町映画タウンおすすめベスト1000でもあり、犬が活躍する映画としてtwitterで教えてもらったこの映画、ほんと犬、可愛すぎる。チャペックの「ダーシェンカ」も思い出す。ぬいぐるみみたいなのに名演。君がいないと!

 

ダーシェンカ 愛蔵版

ダーシェンカ 愛蔵版

 

 

 ビデオパッケージに田沼雄一さんが書いておられる解説によると、この作品、ダシール・ハメット原作で、探偵事務所に勤めていた探偵ニック・チャールズが大富豪の娘ノラと結婚し、探偵ごっこ好きのノラのために事件に首をつっこむという体の話だが、人気シリーズになり、演じたウィリアム・パウエルマーナ・ロイは、アメリカ映画史に残る名コンビとうたわれるようになったとのこと。また、アメリカ映画名物<夫婦コンビ>を探偵映画、ミステリー映画のジャンルに定着させた功績にも多大なものがあるとのこと。さらに、wikipediaによると、ニール・サイモン脚本の「名探偵登場」にもこの二人のパロディのようなカップルが登場しているという。

邦画の「昨日消えた男」*1や「待って居た男」*2など、長谷川一夫山田五十鈴のコンビ探偵ものにも影響を与えているのではときいているけれど、それらの焼き直しぶりにも感心。いたずらぽい表情や構成などを江戸長屋に置き換え。

テレビドラマ「時効警察」もこの流れの作品かな?

夜の素顔

「夜の河」「夜の蝶」に続く吉村公三郎「夜」シリーズ第3作目とのこと。「夜の河」は京都の染めに携わる女性が主人公、イノダコーヒなども登場、「夜の蝶」は京都のバーのマダムおそめさんがモデルの物語であり、今回も日本舞踊の世界とのことで京都が関係するかと思いきや、京都と関係する描写はほとんどない。京マチ子演じる主人公が昔は祇園でも舞っていたという零落した女性に会うくだり、あとは浪花千栄子京マチ子の関西弁のまくし立て合い(←大変見事!)、その中に出てくる「釜ヶ崎」などの単語に関西を感じる、それくらいが関西要素であった。

こんな↓風景が出てくるけど、この雪印看板は銀座?

バンダイが作った昭和30年代銀座ジオラマの風景とも似ている。(こちら参照)

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京マチ子演じる女性舞踊家が野心家で、はじめはいわゆる日舞を教えているのだが途中、儲かるからと民謡に転身。地方まわりをするのだけど、わたしにはジャンルを飛び越えているように見えたりもしたが、そういうことがナチュラルに感じられる時代もあったのかな?最終的には現代音楽とのコラボを大きな劇場にかけてのチャレンジなどあり、そこの部分は戦後そういう流れもあっただろうなと感じられた。

京マチ子の結婚相手が、京マチ子をプロデュースとかいいながらその実体は不誠実なヒモという描写もあるのだけど、才能のある女性をプロデュースという立場の男性、最近のドラマでもそれじゃヒモみたいとなって振られる展開があり、ほんとはそんなことばかりでもないだろうにそうみなされてしまう風潮ってあるのか?などとも思った。プロデューサーという立場自体がそうみられることもあるという感じかな?

地方まわりの中で阿波踊りとともに出てきたこの映像に惹かれた。阿波人形浄瑠璃

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キネマの天地

松竹大船撮影所50周年記念で作られた作品。旧作日本映画のあれこれが出てくるかなとみたのだけど、主人公は田中絹代風、とか渥美清演じたその父の名前は小津映画からのネーミング喜八、とかカール・マルクスマルクス兄弟の取り違えとか散りばめられている中で私がわかったのはそれ位だった。斎藤寅次郎とか自分の好きな映画の監督のモデルも出ていたようなのだけど、この中のどの人?という状態。(次々と喜劇を思いつく人かな?)まだまだ途半ば。女優の愛の逃避行劇もピンと来なかったけれど岡田嘉子のことだったらしい。脚本には井上ひさし山田太一も加わっているけれど、山田洋二監督作品の性格が色濃く、主人公のご近所さんの倍賞千恵子が渥美さんとしょっちゅう一緒に出てきて、寅さんファミリーに案内されている旧い松竹のテーマパーク、みたいな趣きの映画だった。

 

あの頃映画 「キネマの天地」 [DVD]

あの頃映画 「キネマの天地」 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • 発売日: 2012/12/21
  • メディア: DVD
 

 

踊る大紐育

 

踊る大紐育 [DVD]

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みたのはvhs

雨に唄えば」で大感激、ジーン・ケリースタンリー・ドーネンのこちらもみてみた。

有名なナンバー、脳天気な展開、見事なダンス。ただそれを楽しめばよい映画。ニューヨークに上陸した三人の水兵の一人はフランク・シナトラ。そのお相手の女性陣の衣装も華やかで楽しい。ただ、いろんな事情で数あわせに駆り出された女性の扱いが、少しフォローはあったものの、なんだか酷で。。女性コメディアンって難しいという話を思い出す。笑いきれなくなってしまう自分がいる。これはなんだろうな。基本的には女性タクシードライバーとか自然史博物館の女性研究者とか女が引っ張っていってる部分も多い映画なんだが。

いつも信頼して読んでいるyahoo movieのbakenekoさんのレビューがとても参考になる。 

movies.yahoo.co.jp

 舞台では明日はまた戦場にという明暗コントラストのついた作品だったんだ・・

 

プリティ・リーグ

 

プリティ・リーグ [DVD]

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みたのはvhs版

女子プロベースボールの話。「タンク・ガール」*1でパンキッシュな主人公を務めたロリ・ペティという女優さんのまた違った演技がみられるということで借りてみた。ジーナ・デイヴィス演じる天才的野球センスを持つ姉の影でコンプレックスに悩みながらやっていく妹の役。

スポーツやっている人の苦悩や屈託って、スポーツに関心の低い自分はなかなか思いを至らせたことがなかったのだけど、(自分とは種類の違うタフな人たちみたいな扱い)大河ドラマ「いだてん」でもこちらでも、ちゃんと説明してくれたらきっちりわかるし思いっきり共感する。主人公が昔を回想する形ではじまるこの映画、流れた時間の重みが加わってとても味わい豊かなものになっている。

ジーナ・デイヴィス、「テルマ&ルイーズ」とはまた違った落ち着いた長女的役を魅力的に演じている。チームメイトとして登場するマドンナの魅力的なこと。動作で人を惹き付けるのとかも超一流。映画のマドンナ、今までにみた「エビータ」*2も「スーザンを探して」もとても良かった。チームメイトの抱えている問題への寄り添い方がとてもしゃれていてこの細部への丁寧さがほんとに気持ちの良く、信頼できる作品だ。ベニー・マーシャルは「ビッグ」や「レナードの朝」の監督。どちらもアメリカの良さが繊細に感じられて好きな作品だ。