三十九夜

 

 こちらもふや町映画タウンおすすめベスト1000の中のひとつ。ヒッチコック作品。

スパイものにロマンチックコメディ要素を混ぜたような映画。雲をつかむような話を最後に氷解させるイデアが面白い。リアリティ優先でものを考えると、主人公を歯がゆく思ってしまうのだけど、シンプルなアイデアを映画として楽しくハラハラさせるのがヒッチコックの仕事なんだからヒッチコック映画として楽しめる。

美女と野獣、オルフェ、オルフェの遺言

 

  

オルフェ [DVD]

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オルフェの遺言 [DVD]

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twitterふや町映画タウンのおすすめベスト1000というハッシュタグでお話をさせてもらっていて、その中でとても薦められた作品群。ジャン・コクトーというとまず絵画が浮かぶ感じで、以前みた監督作品「恐るべき子供たち*1や原作がコクトーの「恐るべき親たち」*2などの作品ではなんか怜悧だったり冷笑的だったりする印象を持っていたのだけど、今回観た三作品はロマンチックで愛の尊さを謳ったものだった。。そして振り返ると、「恐るべき子供たち」でも博愛主義とは反対の本当に愛する人を峻別する感じがあって、それは「オルフェ」でも共通な気もする。安易なハッピーエンドに慣れた人間には冷たさを湛えているようにみえる「オルフェ」もとても愛の真実と色々な形を伝えている。「オルフェの遺言」は、「オルフェ」の続編。「オルフェ」の方は話だけ追っていけばある程度ついていけたが、「オルフェの遺言」は、もっと元のギリシャ悲劇のことを知っていた方が理解が深まるのだろうなと切に思った。

美女と野獣」は、とても楽しくみられる。野獣の造形も「スター・ウォーズ」のチューバッカのようでちょっとかわいらしくみえてしまい、その高潔な心とともに、はじめから全面的に応援してしまった。途中にヒロイン、ベルに対し、「動物をなぜるようななぜ方をしている」というセリフがあるのだが、確かに、私もそんな視点でみているかも、とハッとさせられた。

基本的には自分の日常に近いような素材の映画を好んでみている私だけど、路地裏散歩ばかりでなく、国宝級のものに触れるのも楽しいなという気持ちにさせられた。

「オルフェの遺言」には親交があったらしいピカソなども出てくる。「オルフェ」も「オルフェの遺言」もコクトーの生きた時代を映しているように感じる。詩人の集まり、ラジオの言葉から天啓を受ける(このシーンなんだか好きだった)、みたいなところもコクトーの生活を感じさせる。

UN loved

 

UN loved [VHS]

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 ふや町映画タウンのHPの在庫監督一覧をみていて、これはどなた?となって気になった万田邦敏監督。監督別のページをみにいくと、この映画はオープン当初は在庫がなく、後から買い足された一覧に入っており、わざわざ買われた感じがとてもしたもので、調べたら2001年カンヌ国際映画祭批評家週間招待作品 レイル・ドール賞&エキュメニック新人賞W受賞作品とされており、しかも円盤にはなっていない様子。これはふや町映画タウン健在のうちにみておかねばとなった。

市役所に勤める森口瑤子さん演じる光子は仕事ができるけれど、出世欲なし。自分が本当に求めることを追求した人生を送りたいと思っている。仕事で出会うアッパーな感じの仲村トオル演じる起業家勝野に思われるが・・というストーリー。勝野タイプへの違和感が表してあるところ、とても響いた。勝野とは対照の、もしかして世間的にはダメンズといわれてしまうかもな松岡俊介演じる下野という男とのかかわりもそのあと出てくるが、この辺りもとても身近な感触。三人の舞台劇のように会話が進み、光子のまっすぐさに嘘はないのだけど、嘘がないゆえのしんどさまで表現され・・なかなか秀逸であった。光子ほどシンプルに心のうちを外に出す人、西洋型社会で生きてきた人などには見受けられるけれど、どっぷり日本社会の中ではちょっと浮きもする。でも、その心持ちというのは突飛なものではなく、納得がいく。表現の仕方は、こんないいかたをしたらどうなんだろう・・という気持ちにはなるが・・とにかく直球で人生の選択や他者との共生ということを考えさせてくれるおもしろい映画だった。

見終わった後、万田監督は小池栄子主演の「接吻」*1という映画の監督さんだったことに気が付く。あちらも、死刑囚と交際を求める女性の物語。息もつかせずみさせる映画だったなあ。。

刑事

f:id:ponyman:20191017132115j:plain味のあるパッケージ。裏には淀川長治さんの「再びこれらの名作に泣き給え。」という言葉。(もしかしてポニーキャニオンから出ているこの「CINEMA PARADISE」というシリーズを通してつけられた言葉か?)謎解きものみたいな気持ちでみると、紆余曲折が多くもどかしい部分もあるのだが、刑事の暮らしのドキュメンタリーものみたいな感じでみるとリアリティがあっておもしろい。

要になる女性がクラウディア・カルディナーレだったんだなとあとで気が付く。

 

刑事 [DVD]

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 ピエトロ・ジェルミ監督、「鉄道員」で有名なのだと思うのだけど、自分は「イタリア式離婚狂想曲」*1しかみていない。

ル・ミリオン

 

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  • 発売日: 2008/06/28
  • メディア: DVD
 

 

 

みたのはvhs版。

「悪魔の美しさ」*1、「夜ごとの美女*2ルネ・クレールいいなあ!が続いていて、こちらも借りてみる。貧乏絵描きと借金しまくりの周辺の人々、恋人によるほほえましくもとても心地良いテンポの宝くじ騒動。ルネ・クレールの評をみていると、音楽と楽しいストーリーの、というような表現をみかけるが、確かに音楽の使い方が素晴らしい。「夜ごとの美女」でも、オペラ座で作品を披露するのが夢の音楽家が主人公で、素の主人公がオペラの世界に入っていく瞬間がおもしろかったが、こちらの映画でも愉快な雰囲気がピンチの主人公を追い込んでみたり、音楽の使い方がとてもおもしろく、本当に楽しめた。そして、またまたこちらの映画でもオペラ座が出てきて、こちら↓の音楽は私にも聞き覚えがある。

youtu.be

多分CDで再版されたこちら↓のLP版が家でよくかかっていたからだと思う。

 

オリジナル盤による戦前欧羅巴映画主題歌集

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夜ごとの美女

 

夜ごとの美女 [DVD]

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 みたのはVHS版。

堂々たるクラシックという感じがして勝手に敷居を高くしていたが、大誤解。ものすごくかわいい映画。「ミッドナイト・イン・パリ*1に先駆けたこの設定、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のような疾走感、「コントラクト・キラー」*2や「ラ・ヴィ・ド・ボエーム」*3のような哀愁とユーモア、「カイロの紫のバラ」のような色彩もあり・・・わたしの好きな映画のいろいろなエッセンスを備えたご先祖様的映画だった。行きつけのビデオ店ふや町映画タウンで評判の美男ジェラール・フィリップ演じる音楽家が自動車整備工場のすぐ上のえらいがちゃがちゃした下宿に住み、音楽に集中できなかったり、集中できる夜にピアノを弾いたりして困られたり(その人間関係がいいたいこといっているようでちゃんとラインはわきまえている感じで好ましい)、生活そのものを日々生きている下町ではちょっと浮いており、夢の世界で自分の気持ちが充たされるのだけを楽しみにしているが・・というストーリだが、仲良しの整備工や警官がちゃんとその人なりの目のかけかたをしてところがとても気持ちがいいし、ラストに向けては映画的なおもしろさにも満ちてのうねりがあり、終始とても楽しめる映画だった。

ふや町映画タウン☆☆☆(かなり、おすすめ!)作品。

滝を見にいく

 

滝を見にいく

滝を見にいく

 

 

 衛星劇場にて。公開当時気になっていたなあという記憶だけをたよりに視聴。面白かった。最後の最後に沖田修一監督だったと知った。うん、やはりか!

衛星劇場の紹介記事によると

「40歳以上の女性・経験問わず」という条件でオーディションを実施し、市役所の地域サポート人から長年の夢をかなえた79歳の主婦まで、多彩な経歴を持つヒロインたちが起用された。

とのことだけど、それぞれのおばさんの描き分けがうまいし、ハマっている。とても素人にはみえないのだけど、最近「ハッピーアワー」*1みたいに本職の役者さんを使わずに撮る手法の映画の新鮮さを生かした作品群というのもあって、これもそのすばらしい成功例だと思う。

こちらのサイトをみていると、

オバサンの個性や特技を生かしてシナリオを書き直すなど、実験的要素が強い作品となった。

なるほど、あて書きか!確かにそれぞれの特性が生かされていて、また地味なおばさんなら地味なおばさんで、ひとくくりにしてしまわず、その微妙な差異も描いていてうまいなあと思わされた。

登場人物は地味で、おばさん社会に生きている自分からみるとあるあるだらけのスタート。ロケ地、妙高高原の自然がとても美しく、さし色になっている。

エンドロールの人物紹介のイラストも小粋。音楽にクラシックが使われているのもとてもいい。良品だ。

 衛星劇場では10/19と24にも再放送あるようだ。