ティント・プラス監督の「鍵」。大胆ではあるけれど、ファシズムの台頭という時代のプレッシャーやベネチアの持つ夜の暗さや昼の水路の美しさがすごくうまい味付けになって、神代監督版*1みたいな滑稽さとかあまりなく、実は谷崎の本質みたいなねじ曲がった愛情の物語としてなかなか良質に仕上がっているように感じた。
音楽はエンニオ・モリコーネ。ひとつひとつの表現は扇情的だったりするのだけど、画面は美しく、格調高い雰囲気がするのもこの映画の強味だ。
みたのはVHS版。
ティント・プラス監督の「鍵」。大胆ではあるけれど、ファシズムの台頭という時代のプレッシャーやベネチアの持つ夜の暗さや昼の水路の美しさがすごくうまい味付けになって、神代監督版*1みたいな滑稽さとかあまりなく、実は谷崎の本質みたいなねじ曲がった愛情の物語としてなかなか良質に仕上がっているように感じた。
音楽はエンニオ・モリコーネ。ひとつひとつの表現は扇情的だったりするのだけど、画面は美しく、格調高い雰囲気がするのもこの映画の強味だ。
みたのはVHS版。
ついに最終巻。
1巻との絵のリンクをtwitterでつぶやいておられる方がいらして、その観察、愛情に感心した。はじめと絵のタッチが変わったんだよな・・表紙と単行本の際の挿絵以外は終わる気配は漂わせず、永遠の日常が続いている感じ。妙に考えさせられたり絶妙な風合いの作品だった。名残惜しい・・が、こういう終わり方もいいのかも。
最終巻にあったお葬式ネタはちょっとどきっとした。挑戦的だなあ。
この巻で特に好きだったのは「ダンディライオン」(オチはともかく途中まではえらく自分の好みでウケてしまった。)ときもだめしの回。
BS12でしていた向田邦子さんの「冬の家族」、挿絵画家の森本レオさんがかかれている絵に見覚えがあって気になっていた。
昨日国立映画アーカイブで開催中の「映画イラストレーター 宮崎祐治の世界」の案内をみていて、ふと、この鼻のない顔の表現は宮崎さんのものでは?と思ったのだけどどうだろうか・・(リンク先の「昼顔」のドヌーヴの顏など・・)
宮崎さんの絵、わたしは、この本で親しんでいたのだった。映画をみているとロケ地が気になる自分にはとてもありがたい本。
ドラマ「冬の家族」は、向田さん自身を思わすような編集者の桃井かおりさんが古い家族の中で自由を求める心があるけれど、はっちゃけてしまうのではない、抑えのある感じで良かった。早坂暁さんのドラマ「花へんろ」でも、やはりそうだったのだけど、この手の演じ方をされる桃井さんとても好きだ。
アラカンさんが秀吉の昭和13年稲垣浩監督作品。撮影宮川一夫氏。
宮川さんの著書「私の映画人生60年 キャメラマン一代」によると、宮川さんがキャメラマンとして世間に評価された作品とのこと。*1自分はカメラのことはわからないのだけど、オーバーラップみたいになっている撮影技法にこんな時代から・・と思ったり、ラスト近く山間でのいくさのシーン、いかだ流しのような移動など撮影大変だったのではないかななどと思いながらみていた。。と、私の感想はほんと頼りないのだけど、宮川さんのカメラに注目されているブログがあったので、リンク貼っておく。(こちら)。
志村喬がねねの父親役。実際の年齢は藤吉郎を演じたアラカンさんの方が二才年上のようだ。蜂須賀小六を演じた東明二郎という俳優さん、貫禄あって気になったが調べたら稲垣監督のお父上らしい。こちらのサイトをみると東明二郎さんが特別出演となっているのはそういうことか・・
*1:謙遜して「評価された?」と書かれている。
最近気になっている深田晃司監督作品。同監督の「ほとりの朔子」*1のいとこのような映画。「ほとりの~」では鶴田真由がインドネシアに詳しい研究者だったが、こちらもインドネシアで通訳などの仕事をしている女性。「ほとりの~」にも出ていた太賀も、彼女とインドネシア人の夫との間に生まれ、自らインドネシア国籍を選んだ男の子として出てくる。太賀の雰囲気がいかにもインドネシア人として生きている感じで達者だなあと思わされた。
ストーリーは、人間と神だとか自然だとか大いなるものの関係、また人間間の期待と裏切りみたいなものを感じさせるものであった。深田監督、「淵に立つ」*2もだったけど静かにストーリーが進む中に調和を壊す演出が面白い。冒頭から出てきて311のことを意識しているであろうインドネシアの津波の話。犠牲と確執。。いろんなものをじんわりと心に残す。
インドネシアというアジアの異国での撮影がそういう気持ちにさせるのかタイのアピチャッポン監督の映画のような空気も少し感じた。
ディーン・フジオカが日常を超越したような役にぴったりだった。
新藤兼人監督版「春琴抄」。ちょうど直前に見た神代版「鍵」*1でモダンでクールな娘を演じておられた渡辺督子さんが主演。百恵ちゃん友和バージョン*2とかだと民主主義社会的な視点で理解しうる美しい物語にしあげてあったのが、こちらでは丁稚は丁稚という階級差をくっきり際立たしてだからこその倒錯愛を描いていて、また物語の構成も春琴たちの側に仕えていた老女の住んでいる老人ホームに新藤監督が訪ねていって話をきくという、現代とクロスさせる独自の面白さがあった。監督の「三文役者」*3もちょっとそういうところがあったなあ。
伊藤大輔監督の「春琴物語」*4でも東山千栄子さんの美しい語り言葉で伝聞の物語として描かれていたが、原作がどういう形になっているのかみてみると、この「讃歌」がまずお墓を訪ねていきいろいろ調べるという形式は原作を生かしているように思った。
クライマックスシーンでのATG作品らしい奇抜なセットも目をひく。奇抜ながらもあの表現はなかなか卓越していて、みるものへの配慮もある。
春琴に横恋慕するぼんぼん原田大二郎がなかなかよい。原田さん、「裸の十九才」*5でも印象的だったけど、ピュアな魅力を新藤監督に認められていたのだろうな。彼の別荘のプール開きでの太鼓持ちのひとなども面白い。ATGだし多分予算少ない中で豪奢とはいかないけど阪神間ののんびりした空気がうまく表現されているように感じた。この作品にも春琴が鯛のお刺身を好む話が出てきたが、昨年NHKで放映していたドラマ「平成細雪」でも、鯛のお刺身へのこだわりが出てきた。谷崎にとって鯛のお刺身というのは関西のお嬢様こだわっている味覚としてうってつけのものなのかな・・上質でまろやかな・・
ラスト、乙羽信子が三味線を弾くシーンのよき迫力、乙羽さんは新藤監督のミューズだなあと実感した。
みたのはvhs版