マリオ・バーヴァ監督作品を二本。
まずは、ふや町映画タウンのおすすめに挙がっていた「血塗られた墓標」。
ゴーゴリ原作のイタリアンゴシックホラー。1960年作。
火あぶりになった魔女の復讐譚からのモノクロで端正なゴシック・ホラーだが、魔女が復讐を口にする場面でルネ・クレールのかわいい魔女もの「奥様は魔女」*1の冒頭、「こんな目に遭わせた人間なんか呪ってやる」(→のちには手違いの連鎖でハッピーな展開になる)というシーンを思い出し、多分冤罪やスケープゴートということも多かっただろう魔女狩りという悪習のおそろしさがふと心に浮かんでしまい、途中まで善良な罪なき人が吸血鬼伝説風に魔女の犠牲になっていくところではハラハラと犠牲者側に立って観ていたものの、最後大勢の村人に魔女がやっつけられるシーンに、ちょっと集団に火がつくことの恐ろしさを感じてしまった。だいたいこの魔女というのが古城に住む一族の女で魔女認定されたら親族でも容赦なしという解説が冒頭に入るものだから、なにか領主の都合で犠牲になったという経緯も想像してしまう。
二作目は「処刑男爵」(1972)
こちらは「血塗られた墓標」でモヤモヤしてしまった気持ちに少しこたえてくれているように感じた。
物語は70年代。観光古城での出来事。古城の中に登場するコカ・コーラ自販機や主人公の男が乗ってくるパンナムの映像や女性の眼力強調メイクやファッションも時代ぽい。
主人公の大学生のご先祖さま(気に入らない人物をサディスティックに処刑する悪名高き人物)に会いたいという勝手な思いでとんでもないヤツを蘇らせ、周りが迷惑を被るという「ジュラシックパーク」みたいな構造の話で、大学生の詰めの甘さで事態が悪化するところなどもパニックムービー風に見ている方はイライラしながら入り込む。
サディスティック男爵を蘇らす方法が、魔女の「彼を何度も何度も痛い目にあわせて死に至るまでの苦しみを一度では終わらず何度も味わせてやりたい」という願いからの力を借りるという設定に「血塗られた墓標」との関わり、つるし上げられた側の言い分を感じた。最終的にも男爵にやられた魔女以外の連中のパワーを使っての設定で自分には「血塗られた墓標」の変奏曲のようにも感じられた。
映画に詳しく信頼して相互フォローさせてもらっている方のtweetには
『処刑男爵』鑑賞
— もっと映画を観たい人 (@mottoeigamitai) 2022年3月24日
中世の暴君が蘇るホラーなんですが、なんか色々変な一本。
この70年代前半のイタリアンホラーはゴシックからスプラッターやモダンホラーの転換期のちょうど中間といった感じで味わい深いんですよ(変だけど)。#マリオ・バーヴァ#映画好きな人と繋がりたい #映画好きと繋がりたい pic.twitter.com/SZ3tyFILFJ
と。確かに終盤の様相にもそれを感じる。コカ・コーラ自販機があるとはいえ古城の佇まいは本格的ゴシック・ホラーそのものだし。
そして詳細に考えると変だなというところも確かに散見するが、その辻褄合わせで長くなるよりあれくらい(ビデオは86分)の方がいいと思う。
ジョゼフ・コットンの気品、出てくる少女の、無垢なるものが真相をみつめているような雰囲気はとても良かった。