逢びき

 

勝手に想像していた悲恋物語に観客が付き合わされるという感じが全くなく、実に面白かった。

駅の列車や待合喫茶の軽いやりとりから始まる冒頭、何度も舞台になる待合喫茶のマダムの様子が丁寧なのも、何やら深い想いがありそうなヒロインをガサガサと邪魔する噂好きのオバハンが滑稽にそしてとても迷惑そうに描かれているのもすごくこの映画の面白さ、コクになっていて、ヒッチコックや良質のイギリスのサスペンスを観ている時と同じ心地に。冒頭からヒロインの事情はわからないけどロマンチックな気持ちを台無しにされるうんざり感は手に取るようにわかり、すっと物語に入っていける。うまい。

きちんとした円満な家庭の主婦が駅の待合喫茶で妻子ある男性と出会って。。という話だけど、彼女の家庭の描写も丁寧でそこがまた物語全体に生きていてとても素晴らしい。ヒロインの男性に惹かれながらの葛藤、「岸辺のアルバム」の八千草薫のよう。

今まで誠実な生き方をしてきたであろう二人ゆえの慣れない小細工や逡巡も丁寧で、観ているものの気持ちをサスペンスフルな魅力で離さない。

上質で心憎い仕上げ。イギリス映画らしい抑えのきいた味。とても堪能した。

ふや町映画タウンおすすめ作品。 (かなりおすすめ!!! ☆☆☆)