朝日新聞の金曜夕刊に載っている「私の描くグッとムービー」というコーナーが好きでよく読んでいる。各界の方が描く好きな映画のイラストとインタビューで構成されている記事。
少し前に京都の瑞泉寺というお寺の住職兼イラストレーターである中川学さんという方が雷蔵氏の「濡れ髪剣法」(1958)を取り上げておられ興味を持ち観てみた。
タイトルから忍者的なアクション映画を想像していたが、もっとコメディドラマ寄りで親しみやすいいわゆる明朗時代劇。私の好きな分野。
雷蔵さんの演じる若殿様の婚約者鶴姫を演じるのが八千草薫氏なんだが、八千草さんの軽いふくれっ面がとてもチャーミング。キツすぎなくちょうどいい塩梅。
馬に乗っておられるシーンなどもあり驚いた。
もう一本観たのは内田吐夢監督の「酒と女と槍」。
こちらは東映創立70周年記念DVD〈巨匠傑作選 内田吐夢〉と題し12月に発売決定との情報にtwitterでよくお話しする方がとても喜んでおられたもので借りてみた。クライマックスでの大友柳太郎の乗馬シーンに度肝を抜かれたと書いておられたのだけど、確かにそこはすごい迫力で、いよいよな状況に追い込まれた大友さん演じる主人公富田蔵人高定がこれからどこへ向かうのやら、途方もない雰囲気であった。
この主人公は豊臣秀吉の甥、秀次の家臣で、秀次が一族郎党秀吉に殺されたあとの物語なのだが、ちょうど、「濡れ髪剣法」のイラストを描かれた中川氏がその秀次の菩提を弔うお寺瑞泉寺のご住職だったので、つながりも感じた。さらに、「濡れ髪剣法」が男性版「ローマの休日」のような話で、大友さんの「鳳城の花嫁」とも似たところがあるので、頭の中で二作品がつながる。
観ていて、大友さんは台詞より、立ち合いの所作などの美しさが優れておられるのだなあと実感。
海音寺潮五郎原作。ちょうど、NHKラジオの新日曜名作座が海音寺潮五郎特集をしていて、それが面白いことも観るきっかけになった。
原作にどれくらい忠実な話なのかわからないが、「女心がわからない」といわれる主人公、確かに私からみて不可解な部分も。