宮本武蔵(内田吐夢監督 錦之助版)前半

有名なのに今一つわかっていない宮本武蔵、この際ちゃんと知ろうとレンタル。メジャーな錦之助内田吐夢監督バージョンから鑑賞。この作品前五作なんだけど、一年に一回公開していたらしい。

一作目 宮本武蔵

 

錦之助演じる武蔵の姉に風見章子氏。山田太一のドラマ「深夜へようこそ」や映画「忘れられぬ人々」*1美しいおばあ様役で注目していた女優さん。若い頃の姿を観たいなと思っていたら、一巻目では気丈でカリスマ的な役。一巻目ではなんといっても禅僧 宗彭沢庵を演じた三國連太郎の存在感が凄い。禅の問答のような独特のやり方が説得力を持って開陳される。

武蔵の闘い方が実践的であると書いておられるブログ*2を拝見したが、一巻目では特に、石つぶてなどを使ってとにかく生き延びるリアリティがある。武蔵を描いたコミック「バガボンド」、読みかけて、実は最初のワイルドさでちょっと挫折したのだが、この辺の部分なんだな。今だとちゃんと楽しめそう。

二作目 宮本武蔵 般若坂の決斗

 

武蔵の友人又八(木村功)をそそのかして、戦場に駆り出したといって、浪花千恵子さん演じる又八の母がずっと武蔵を逆恨みし、この巻では果し合いを挑んだりする。一巻でも浪花千恵子さんの演技が秀逸だったし、この巻でも、真剣なんだけどコメディ的な部分もあり、文楽でいうところの詰人形の活躍のような感じ。

そしてこの巻ではなんといっても月形龍之介演じる奈良宝蔵院の老僧日観師の、引退して畑仕事をしている中にもみなぎる気迫が素晴らしかった。

林彦次郎という吉岡一門で冷静な人材を河原崎長一郎が演じているが、これがなかなかいい。河原崎さん、集団から一歩距離をとるような役はまるな。

 

三作目 宮本武蔵 二刀流開眼

 

後ろに写っているのが高倉健演じる佐々木小次郎。「大いなる旅路」*3三國連太郎演じる鉄道員の息子姿なんかでも感じたが、二番手時代の健さん新鮮。

三作目でもまた浪花千恵子さんが大活躍。執念のおばば役。なかなか面白い。

剣の名門吉岡一門とのせめぎあいが始まっているが、吉岡の跡継ぎで武田勝頼的悩みをかかえた吉岡清十郎江原真二郎氏が演じていて、こういう屈折した役うまいなと思う。

*1:忘れられぬ人々 - 日常整理日誌

*2:二巻目 「般若坂の決斗」のことについて書いておられる部分だが、こちら

*3:大いなる旅路 - 日常整理日誌