華麗なる激情

 

年末に買いためたパンフレットを整理しようかと思い立ち三谷幸喜氏の2002年の舞台「You Are The Top」の時に買ったものを眺めていたら「三谷幸喜の“ライバル競演”映画ならこれだ!!!」という興味深いコーナーが出てきた。「You Are..」は、男同士ライバルの小粋なストーリーでもともと市村正親鹿賀丈史が演じるはずだったのが、ぎりぎりの鹿賀氏の病気降板で浅野和之氏が代役を務めたもの。結構時間のない環境でのピンチヒッター、本当に客席からの応援の熱気もすばらしく思い出深い舞台だった。あそこからのただいまの大河への道筋を感じる。そして、三谷氏の選んだ映画の中にこの「華麗なる激情」も紹介されていて早速借りてみた。

ミケランジェロがシスティナ礼拝堂の天井画に取り組んだときの教皇ユリウス2世との愛憎を描いたもの。第38回アカデミー賞の撮影、美術、音響、作曲、衣裳賞と5部門にノミネートされたそう。それらのものは壮麗でその時代の絵を観ているようだったし、冒頭、ミケランジェロが本来の仕事と思っていた彫刻の紹介がかなり丁寧にされているところ、礼拝堂の絵画についても解釈論に踏み込んでいるところはとても好ましかった。

ただちょっと画面が単調で、絵画に取り組むミケランジェロといつ仕上がるか見に来る法王の姿の繰り返しが多く、これ、ヤマザキマリさんが漫画で描いた方が面白いものができるのじゃないか?と思ったりもした。私が外国映画の史劇的なもの苦手、というのもあるのかもしれない。壮大なんだけどドラマ部分にいまひとつ入り込めないような印象をつい持ってしまう。

世界史に疎い自分にはミケランジェロメディチ家との関わり、今みたいに平和を唱えるわけではなく好戦的な法王というのも新鮮で、経済(献金)のために枢機卿を増やす話などもなにか「ゴッドファーザー part3」につながる物語みたいでこれからのとっかかりとして興味深くもあった。

監督のキャロル・リード、実は「第三の男」*1もあの音楽とオーソン・ウェルズ登場のシーンは良かったけれど他の流れには少し辛気臭さを感じたところもあったりして、悪くはないのだけどちと今後注意しながら付き合っていこうかななどとも思った。

三谷幸喜氏はハリウッドの肉体派俳優チャールトン・ヘストンミケランジェロ役)がイギリスの舞台俳優レックス・ハリスン(法王役)にひけをとっていないところも評価している。そして、「みんなのいえ」の田中邦衛の演じた棟梁はこのヘストンのイメージだと。ふむなるほど。それは頷ける。

私はチャールトン・ヘストンというとマイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」でライフル協会の会長として嫌な役回りで登場したことを思い出してしまったが、wikipediaを読んでいたら、人種差別反対運動なども熱心だったようで、一を見て十を知ったつもりになることは慎まねばなと思ったりも。